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謎だらけ…日本ペイントめぐる買収劇 白紙に戻したウットラムの“真意”は?
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シンガポール塗料大手のウットラムグループが3月12日、日本ペイント(大阪市)に対する事実上の買収提案を白紙撤回し、国内2位の塗料メーカーを巡る買収劇はいったん決着した。緊急会見を開いた日本ペイントは「今後もパートナーシップを強化していく」(同社幹部)と信頼関係を強調したが、ウットラム側から買収提案の目的が示されていないことも明かした。ウットラムはなぜ買収を仕掛けようとしたのか。最後まで謎だらけの買収劇だった。
幕引きは、ウットラムのゴー・ハップジン代表から直接、酒井健二社長に「争ってまで買収提案したくない」と取り下げの意思が伝えられたという。この白紙撤回と同様、買収提案もあまりに突然だった。
日本ペイントは今年1月21日、同社から株式公開買い付け(TOB)による買い増しで、議決権の45%の取得を目指す提案を受けたと発表。敵対的買収でなければ通常、両社間で事前協議の場を持つものだが、日本ペイントが打診を受けたのは「発表の数日前だった」(同社幹部)。
ゴー氏と酒井社長は、アジアでの合弁事業を共同で進める中で数カ月に一度、定期的に顔を合わせていた。その際、ゴー氏から一方的に買収提案について伝えられたようだ。
正式に意向表明書を受けた日本ペイントは、買収防衛策の発動の可否などを取締役会に勧告する独立委員会を設置。ウットラム側へ2度にわたり、買収目的や買収後の企業価値向上策などについて質問状を送った。
だが、買収提案が取り下げられた今も、ウットラム側から回答を得ていないという。
日本ペイントが2度にわたって質問状を送ったのには理由がある。今回の買収提案には、買収後にどんな戦略で企業価値を向上させるのか、買収後の企業統治のあり方などについての情報が完全に欠如していたためだ。
ウットラムは華僑系の非上場企業で、実質的にゴー氏のオーナー企業。ウットラムに買収されれば、ゴー氏個人が株主総会の支配権を掌握し、企業統治上のリスクが生じるなど懸念材料が多すぎた。
取締役会の監視もきかず、ライセンス料を不当に設定するなど利益移転が行われる危険性もあった。
また、日本ペイントは議決権割合が20%を超える株式買い付けに対し、買収防衛策を持っている。買収が実行された場合、取締役会の決議などの条件がそろえば、ウットラム以外の既存株主に新株予約権の権利を行使させて対抗する。
ウットラムも、この防衛策を重々承知していたはず。では、そもそも買収提案の理由は何だったのか。
ウットラム側が今回の買収提案について投資アドバイザーに指名し、買収後に日本ペイントの経営参画メンバーに入れようとした投資会社のスパークス・アセット・マネジメントは「日本ペイントの経営スピードにゴー氏が不満を抱いたのが、買収提案のきっかけだった」と明かす。
さらに、買収後はM&Aにより世界市場での競争力を高める戦略があったという。しかし具体策が示されないままでは、日本ペイントの警戒感は増すばかりだった。
これが本当なら、両社の経営トップが定期的に顔を合わせているにも関わらず、重大な経営課題についての意思疎通ができていなかったことになる。また「今回の提案自体、スパークスがウットラム側をあおったのではないか」とする業界関係者の声もあり、真相はいまだ不明だ。
今後は日本ペイントに対するウットラムの持株比率の引き上げや、日本ペイントによるアジア合弁会社の子会社化について協議を進める。
日本ペイント側にはウットラムとの協業関係を維持する必要がある。塗料市場のシェアを握る欧米勢や、M&Aなどで海外売り上げを急速に伸ばす競合の関西ペイントに対抗するためには、切るに切れない関係だからだ。
だが、不可解さを残したままで終了した買収劇は、両社の協議が難航する危険性をはらんでいる。(田村慶子)