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次世代スパコンで試される日本の底力 “世界一”奪還へ
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スーパーコンピューター「京」=神戸市中央区の理化学研究所計算科学研究機構 文部科学省が世界最高速度の次世代スーパーコンピューターの開発を決めたことで、日本の産業界全体にとって、競争力強化などの波及効果が大きい。
スパコンで再び“世界一”を目指すことは、日本のものづくりの力が試されるだけでなく、理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」の100倍高い性能を持つ次世代スパコン成長戦略へのエンジンにもなり得る。
現在、国内最速の計算速度を誇る理化学研究所と富士通が開発した「京」の性能を100倍ほど上回る次世代スパコンを開発するのは、最先端の研究や製品開発に欠かせないためだ。
無数のデータを超高速で処理するスパコンは、大学や研究機関などの利用が多かったが、理化学研究所で稼働中の京をはじめ民間企業の製品設計や開発などでも利用が進んでいる。
スパコンの利用による幅広い分野にわたる先端研究の迅速化は、国内企業の競争力向上につながる。
住友ゴム工業は、路面状況によって1秒間に10万回も変形するとされるタイヤの開発に京を生かす。
膨大なシミュレーションでタイヤの分子構造をナノ(10億分の1)レベルで解析し、世界最高水準のタイヤ開発に応用する。
また、清水建設は建物の風圧の解析に京を用いて設計コスト削減などを狙うほか、大日本住友製薬は抗がん剤を中心に創薬実験でシミュレーション化を目指す。
次世代スパコンは、地震や集中豪雨などの解析による防災利用への活用が見込まれることに加え、「世界に先駆ける製品の投入のためにも、計算速度は速いに越したことはない」(大手電機メーカー幹部)と、産業界も大きな期待を寄せる。
京の開発をめぐっては、2006年から世界一の計算速度を目指して計画されたが、09年に京の目標性能をしのぐ米国の「セコイア」の開発が発表された。
11年に京は世界ランキングでトップに立ったものの、12年にセコイアに抜かれ最新ランキングでは3位に後退。
次世代スパコンは米国のほか中国も開発を急いでおり、激化する競争の中で、世界一を奪還する。
京は、富士通が開発したCPU(中央演算処理装置)を搭載したコンピューターを数多く並べて並列処理させる「スカラー型」とよばれるスパコンでは主流の方式を採用している。
開発コストや消費電力を抑えられ、サーバー製品などの汎用製品への技術転用も簡易とされる。
次世代スパコンでは、京の実績がある富士通が開発の主体となることが有力だが、数十万キロワットもの電力が必要とされ、稼働システムや消費電力を抑える半導体などの開発が課題となる。