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「西武HDvsサーベラス」 敵対的TOBめぐる攻防山場
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西武HDとサーベラスをめぐる経緯 西武鉄道を傘下に持つ西武ホールディングス(HD)に、筆頭株主の米投資会社サーベラスが仕掛けた敵対的な株式公開買い付け(TOB)をめぐる攻防は今週、山場を迎える。
14日には西武HDが平成25年3月期連結決算や今期の見通しを発表、17日はTOBの締め切りで早ければ18日にも結果が判明する見通し。両者の対決の鍵を握るのは、発行済み株式数の約13%を占める約1万3千人の個人株主だ。
サーベラスが3月12日にTOBを始めた途端、西武秩父線など生活の足となっている鉄道路線の廃止や、埼玉西武ライオンズの売却など、サーベラス側が提案したとされるリストラ策への反発や戸惑いの声があがった。
埼玉県の沿線自治体では、「西武支持」の署名運動などが展開された。西武HD株を約2%保有し、業務提携関係にもある京浜急行の幹部は「沿線住民を支える鉄道の廃線は軽々しく口にするものではない」と指摘する。
西武HDの主力取引銀行のみずほコーポレート銀行や日本政策投資銀行、農林中央金庫など、株式の2~4%を保有する主要株主はTOBに否定的だ。サーベラスに次ぐ約15%を保有する西武グループ総帥だった堤義明氏が大株主のNWコーポレーションも、TOBに応じない意向という。
サーベラスはTOB開始前の保有率約32・4%から最大44・67%までの買い増しを目指す。主要株主のほとんどが売却に応じない劣勢の中、TOBの成否を握るのは約1万3千人の個人株主の動向だ。
個人株主は16年12月の西武鉄道の上場廃止以降、換金が難しい状況に置かれている。サーベラスが提示した1株1400円は、一部証券会社が試算した西武HDの再上場の際の株価(1株1千~1500円)の上限に近く、売却に踏み切る個人株主も多いとみられる。
このため、サーベラスが株主総会で合併や事業譲渡などの特別決議に拒否権を持つなど、経営に一定の影響力がある3分の1以上の株式を保有できるとみられる。
サーベラスは18年1月に約1千億円を出資し、西武HDの経営再建に協力してきた。ここにきて敵対的TOBに至った背景には、株式再上場をめぐる温度差がある。
西武HDは「非上場の期間が長引けば株主に迷惑がかかる」(同社幹部)として、できるだけ早期の再上場を目指している。
だが、サーベラスは西武HDに経営改善の余地があり、「2~3年かけてガバナンス(企業統治)を良くしたい」(担当弁護士)意向だ。投資会社としては、投資資金以上の収益を上げなければならず、サーベラスが西武HDに出資した際の1株919円を上回る株価が条件となる。サーベラス側は再上場時の想定株価を2千~2500円とみているとされ、経営改革で西武HDの企業価値を高めたいと考えているようだ。
両者の意思疎通がうまくいっていないことも対立を深めた。サーベラスは昨年10月、西武HDに対し、西武秩父線など5路線を「不要路線」とし、プロ野球球団の売却を選択肢とするよう記した文書を送付した。
西武HDの後藤高志社長は「サーベラスが経営に影響力を強めると、中長期的に企業価値の向上につながるとは考えにくい」と猛反発。これに対し、日本法人「サーベラス ジャパン」の鈴木喜輝社長は「あくまでアイデアとしてあげたもの。強制や要請をするつもりは今後もなく、経営権を獲得する気も全くない」と述べるなど、主張がかみあっていない。
両者の対立はTOBでは終わらない。次の焦点は6月末に予定される西武HDの株主総会だ。
サーベラスは、新任取締役候補として元金融庁長官の五味広文氏や、サーベラス幹部のダン・クエール元米副大統領、ジョン・スノー元米財務長官ら8人を推薦している。選任には株主総会の過半数の賛成が必要で、委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展する可能性がある。
ここでも個人株主の動向が注目されるが、その判断材料となるのが、14日に西武HDが発表する25年3月期連結決算だ。東日本大震災以後、落ち込んだホテル・レジャー事業が復調しておらず、すでに業績が下方修正されている。今期の業績見通しの実現性にも疑問符がつけば、個人株主が経営陣を見限る可能性もある。(藤沢志穂子)