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シャープ奥田社長退任の背景とは? わずか1年3カ月で交代

ニュースカテゴリ:企業の経営

シャープ奥田社長退任の背景とは? わずか1年3カ月で交代

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 経営再建中のシャープが、高橋興三副社長(58)を社長に昇格させるトップ人事を固めたことが13日、分かった。奥田隆司社長(59)は会長となり一線から退く。片山幹雄会長(55)は退任する。

 奥田氏は社長就任からわずか1年3カ月での交代となるが、2年連続の巨額赤字が見込まれ、経営責任を明確にした。14日の中期経営計画と同時に発表する。6月下旬に開く定時株主総会で正式決定する。

 シャープは2013年3月期連結決算の最終赤字が5000億円規模となり、2年連続の巨額赤字となる見通し。主力取引銀行2行から追加支援を受けることが決まっており、中期経営計画の公表に合わせて2行から派遣される取締役人事も発表される。

 高橋氏は米州本部長を務めるなど海外経験もあり、現在は営業と海外事業を担当している。

 奥田氏は昨年4月、常務執行役員から社長に昇格したばかり。当初は、液晶事業への過大投資で巨額赤字を招いた片山氏が、単独で退任する人事も検討されたが、12年度下期(12年10月~13年3月)の連結営業損益の黒字化を達成し、中期計画も策定したことから奥田氏も退き、新体制で計画を推進することにした。

 奥田社長が在任わずか1年3カ月で退任する背景には、大胆なリストラに踏み込んだにもかかわらず業績不振から抜け出せない経営責任を明確化し、社内の求心力を高める狙いがある。さらに海外経験豊富な高橋副社長を起用することで出遅れた海外事業を挽回し、経営再建に結びつける考えとみられる。

 奥田氏の社長就任後、人員削減を含むリストラを実行したものの、業績の下方修正が相次いだ。社内外からは奥田氏に対し、再建計画の遅れの責任を問う声が強まっていた。

 シャープは主力の液晶テレビで国内シェアは高いものの、成長市場の海外での販売力が弱いことが業績低迷の原因となった。

 資本業務提携した韓国サムスン電子など液晶パネルの新たな供給先の拡大や、東南アジアで白物家電の生産販売の強化なども喫緊の課題。高橋氏は海外事業に精通しており、適任と判断した。

 ただ、海外の大手企業とパイプを持ち、米クアルコムやサムスンからの出資交渉を主導した片山会長が退任することで、他社との資本業務提携交渉が難航する恐れもある。12年末時点でシャープは財務の健全性を示す自己資本比率は9.6%まで低下。早急に資本増強を実施する必要があるが、出資引き受け先確保の課題は残されたままだ。

 資本増強のため公募増資も検討しているが、実現のためには株価の回復が不可欠。新体制では、業績改善の道筋を市場に明確に示す必要がある。

 【プロフィル】高橋興三(たかはし・こうぞう) 静岡大院修了。1980年シャープ入社、2008年、執行役員健康・環境システム事業本部長。2012年4月から副社長。大阪府出身。

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