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トヨタ、タイ市場で失速 乗用車部門でホンダ独走…いったい何が?
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トヨタの新型車「ヴィオス」。スポーティーで真っ赤な車体は斬新さも感じさせるが、一部のメーカー関係者やファンからは「ホンダのシティにそっくり」の指摘も=4月、タイ・ノンタブリ県 タイの自動車市場で、世界のトヨタが苦戦している。今年1月~4月まで4カ月間のトヨタのタイ国内新車販売台数は16万1234台(トヨタ・モーター・タイランド調べ。以下同)で前年同期比9000台ほどの微増ながら、シェアは10ポイント以上も落とし30.8%となった。
代わって勢いに乗っているのが、一昨年の大洪水被害で工場が半年にわたり操業不能となったホンダ。乗用車に限ればトヨタを上回る30%以上のシェアを一気に確保し、現時点で独走態勢にある。トヨタとホンダにいったい何があったのか。
今年3月末~4月初めに開催された東南アジア最大級の自動車展示会「バンコク・インターナショナル・モーターショー」を訪れた日系自動車メーカーのある幹部は、トヨタの展示ゾーンをみて唖然(あぜん)とした。
展示してあったのは真っ赤なメタリック色に燦然(さんぜん)と輝くトヨタの新型小型車「ヴィオス」(排気量1500cc)。「一瞥(いちべつ)しただけでホンダ・シティのデザインをまねしていると分かった」と、この幹部は断言する。
日本車が9割近くを占めるタイの自動車市場。昨年に進出50周年を迎えたトヨタが牽引(けんいん)役となり、乗用車のホンダ、1トン・ピックアップトラックのいすゞとすみ分けがなされ、ホンダといすゞが2位の座につく展開が続いてきたが、大洪水からの回復以降、この構図に大きな変化が生じている。
タイ政府が内需を刺激しようと導入した「自動車物品税の還付措置」。ガソリン車で排気量1300cc未満のエコカーを対象に最高10万バーツ(約31万円)を事実上免税する施策で、恩恵を受けようと多くのタイ人ユーザーが販売店に足を運んだ。
他のセールとの相乗効果もあって、昨年1年間の新車販売台数は市場全体で約144万台にのぼり、過去最高を更新した。納車まで半年以上先という人気車種も珍しくなかった。
ホンダはこの好機を逃すまいと、発売済のエコカー「ブリオ」に加えて、タイ人に人気の高いセダン型エコカー「ブリオ・アメイズ」も発売。経済的に余裕のあるユーザー向けに排気量1500ccの新型「シティ」を投入するなど、用意周到なラインアップで販売戦線に臨んだ。結果は前年比108%増の17万台余りで過去最高。乗用車部門ではトヨタを抜きトップに躍り出た。
これにトヨタはあわてた。日本から豊田章男社長を招いての50周年記念式典を挙行したのもつかの間、首位を奪還しようと「急遽(きゅうきょ)、投入が決まったのが、トヨタとしては主力とはいえない小型車のヴィオスだった」と先の日系メーカー幹部。
だが、思いとは裏腹にその後も乗用車部門の不調は続く。ついには月間の販売台数シェアも前年比10ポイント以上の落ち込みを見せるようになり、タイ市場で完全にホンダの後塵(こうじん)を拝すようになってしまった。
こうした情勢について、日本の自動車メーカーを積極的に誘致してきたタイ工業連盟自動車部会のスタッフは「乗用車部門でのトヨタの不調は、エコカー対策や小型車対策が首尾よくいかなかったことが原因」と分析。2010年3月の日産マーチを筆頭に、ホンダ、三菱、スズキと日系各社がエコカーなどの小型車対策を続ける中、「トヨタだけが、経営資源をハイブリッド車などに集中させた結果」と解説する。
経済成長の続くタイでは、荷物も人も載せられるピックアップトラックが1台目、続いて燃費が良く安価な小型車を2台目に購入しようという動きが広がっている。
市場の観測では、トヨタは今年第3四半期(7~9月期)にもエコカー市場に参入するとみられている。ただ、このまま失速状態が続けば、今年初めに掲げた「シェア40%」という目標の達成が困難になることはもはや間違いない。(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)