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おいしい国産小麦食パンの挑戦 日本の食糧自給率向上へ貢献

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おいしい国産小麦食パンの挑戦 日本の食糧自給率向上へ貢献

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ゆめちからの刈り入れ風景。敷島製パンの開発チームは生産農家を廻って賛同者を増やしてきた=北海道芽室町  北海道産の「強力小麦」を使い、その他の原材料も国産にこだわった「オール・ジャパン」のパンが静かな人気を呼んでいる。「パスコ」のブランドで知られる敷島製パン(名古屋市東区)の「ゆめちから入り食パン」だ。開発陣が目指すのは、ずばり日本の食料自給率向上への貢献だ。

 平成20年6月、敷島製パンの根本力開発本部長(当時マーケティング部長)に一通のメールが届いた。

 「国産小麦を使ったパンを研究してほしい」。盛田淳夫社長からの指令だった。前年の19年は干魃(かんばつ)などで世界の小麦価格が高騰。人口が増加する新興国の需要も拡大する中、パン用小麦のほとんどを外国産に頼る状況に盛田社長の危機感は高まっていた。

 同社は食糧難でコメ騒動が起きた後の大正9年に創業。創業理念に「パンづくりで社会貢献」を掲げる。その理念を、国産にこだわり抜いたパンという商品にして世に送り出すときが来た。そう実感した盛田社長の思いを、根本本部長らが形にしていった。

 ただ、商品開発は出だしから高い壁にぶつかった。日本の小麦自給率はわずか約11%で、そのほとんどはうどんや菓子に向いた中力粉や薄力粉用の小麦。パンの主原料となる強力粉用の国産小麦はそもそも調達が難しい。外国産に味で負けないものとなればなおさらで、外国産と勝負できる強力小麦探しに根本氏は産地を奔走する日々が続いた。

 「これならいけるかもしれない」(根本氏)

 展望が開けたのは20年9月、北海道芽室町の北海道農業研究センターで紹介された強力小麦の新品種「北海261号」との出会いだ。北海261号は、粘り気の強い超強力粉ができる。早速、同年11月にパンの試作品を作り、盛田社長へ届けた。

 「こんなにおいしいパンができるのか」。261号改め、「ゆめちから」と名付けられた新品種の味に自信を持った盛田社長のゴーサインで商品作りが本格的にスタート。社長は自ら北海道の小麦生産農家を訪ね、「作ってくれたらうちが買いますから」と、ゆめちからの作付け拡大へ、農家の説得を続けた。

 経営トップによる異例の作付け協力要請が進む中、現場の開発陣は「売れる商品づくり」に苦闘していた。

 ゆめちからで作ったパンは日本人が好む「もっちりした食感」が特徴だ。ただし口に粘つきが残る課題もあった。 22年7月に開発チームに加わった研究開発部パン開発グループの高光健太郎主任研究員は、「このままでは好まれない」と、理想の食感を求めて、ゆめちからと他の国産小麦を配合する研究に明け暮れた。試行錯誤の末、粘り気の少ない中力粉をある割合で配合すると、「もっちりしつつ口溶けもいい」バランスになることを突き止めた。

 おいしい国産小麦パンの商品化のめどは付いたが、市場に送り出すにはまだハードルがあった。生産量の少ない国産小麦では高価格を避けられない。食パンならば同社のヒット商品「超熟」があり、売り場で競合する恐れもある。

 だが、「創業理念をかたちにした商品」「国産にこだわる層をターゲットに」という明確な開発の狙いは徐々に社内で共有され、昨年6月、ようやく1カ月限定で「ゆめちから入り食パン」の試験販売にこぎつけた。

 もっとも、1斤300円という高価格がやはり敬遠され、売れ残ることが多く、敷島製パンの営業担当は小売店から「ボランティアで置いているようなもの」とまで言われたという。

 しかし、商品名に込めた国産小麦のことを「知ってもらいたい」(マーケティング部製品企画グループの上野恵美子チーフ)という開発陣の思いと、生産者の協力のハーモニーは実を結びつつある。生産者の賛同で、ゆめちからの作付面積は23年の100ヘクタールから24年には1千ヘクタールに拡大した。安定した生産量が確保できたことで、今年4月からは通年販売を開始。価格も220円に抑えることができた。

 本格販売から約3カ月。まだ「手放しで喜べる売れ行きではないが、購入者には評判がいい」(上野チーフ)と手応えも出てきた。新たな商品展開も視野にあるという国産小麦パンを広める挑戦は、確かな一歩を踏み出した。(滝川麻衣子)

ゆめちから パン作りに欠かせない強力粉の原料となる「強力小麦」の新品種で、北海道農業研究センターが開発した。病害への優れた抵抗性と、タンパク質の含有量が多いのが特徴。現在、パン用小麦の国内需要の約97%は輸入に頼っている。中でも強力小麦は、高温多湿で病害が発生しやすい日本ではつくるのが難しく、国産品は珍しい。

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