ニュースカテゴリ:企業
メーカー
「DONQ」ブランド支える“商品三分の計” おいしいパンのヒミツ
更新
ドンクの店舗に並ぶパンは、その“役割”に応じて3つに分かれる(5月にオープンした横浜ららぽーと店) 日本での本格的なフランスパンの草分けとして知られる有名パン店「ドンク(DONQ)」は、今年8月に創業108年を迎え、現在、全国で127店舗を展開する。
全国一律の商品を販売する製パン業とは違い、各店舗で粉から生地を成形して焼き上げる「スクラッチベーカリー方式」を採用しているのが特徴で、いわば“町の小さなパン屋さん”の集合体だ。「商品三分の計」とも呼ぶべき商品戦略のオキテが、同社の全国展開を支えている。
全国展開するパンチェーン店は工場でパンを成形して配送し、各店で焼き上げるのが一般的。店舗での作業を集約しコスト削減を図る狙いだが、ドンクの「スクラッチベーカリー方式」は、全工程を店の厨房(ちゅうぼう)でこなすのが特徴だ。
製造だけではなく、商品開発も店に任せる「現場主義」を徹底する。ここで各店が守るべき“金科玉条”が「商品三分の計」だ。
各店では、平均約100種類のパンを販売しているが、うち全店共通の商品群はフランスパンなど3分の1に限られる。ドンクのブランドを維持する「要の商品」で、全国どの店舗でも同じ品質、同じ価格で販売する。
そして3分の1が地区共通の商品群。「地区ごとに人気のあるパンの種類や所得水準も大きく異なる」(広報担当者)ためだ。
残る3分の1は、各店舗オリジナルの商品群。各店舗には専属のパン職人がおり、全国では約600人に達する。
店側が主体的に商品開発を手がけるため、同社の本部には商品開発を主導する組織がない。現場の職人が毎月新商品を提案し、本部がチェックして商品化する。店舗に常駐するパン職人のやる気を引き出し、各店の活性化につながる効果がある。
3つの商品群のうち、同社最大の強みといえるのがオリジナル商品群だ。
実は、ドンクの看板商品の一つとして親しまれる「ミニクロワッサン」も、札幌の店舗のオリジナル商品だった。
昭和60年ごろ、札幌の店舗で誕生した「ミニクロワッサン」は、焼きたての小粒なクロワッサンを量り売りで販売するという斬新な販売戦略で大ブームに。その後、全国の店舗に広がった。
各店オリジナル商品を対象に開催される恒例のイベントが「人気パンめぐり」。おいしさ、売れ筋でトップクラスの人気商品を全国の店舗で販売する。5回目となる今年2月には、9種類が選ばれた。
また、昨年8月には、顧客の人気投票イベント「推しパングランプリ」も初開催。グランプリに選ばれたそごう徳島店(徳島市)の「クルミとゴーダチーズのライ麦パン」(189円)は、今年1月に全国の店舗で販売された。
「社員のモチベーションアップにも大きな効果があった」(広報担当者)として、2回目も検討している。
ドンクファンを増やすとともに、第2、第3の「ミニクロワッサン」の誕生ももくろむ。
3月に就任した中土忠(なかつち・ただし)社長は「私たちが目指しているのは、少し足を延ばして買いたくなるパン」と説明する。
「商品三分の計」をかたくなに守ることで、同社はブランドイメージを保ちながら、全国に店舗網を張り巡らせることができた。(佐久間史信)
本社=神戸市東灘区田中町3-19-14
創業=明治38年8月
事業内容=フランスパンなど各種パン、菓子の製造販売、レストラン営業
売上高=323億円(平成25年2月期)
従業員数=1037人(同4月末現在)