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【底流】「パズドラ」どこへ向かうのか ブランド成熟化へ準備着々
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人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ」のイベントでステージに立つ、プロデューサーの山本大介氏 スマートフォン(高機能携帯電話)向けオンラインゲーム市場が熱い。新興ゲームソフト会社「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」のスマホ向けゲーム「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のダウンロード数が、サービス開始から1年4カ月余りで累計1600万件を突破。パズドラ効果で、ガンホーの時価総額は一時、ゲーム業界大手の任天堂を上回った。市場のさらなる成熟に向け、ガンホーの次の一手が注目される。
大型連休中の4月29日朝。ガンホーのファン向けイベントに参加しようと、東京ドームシティ(東京都文京区)周辺は多くの家族連れや若者でごった返していた。
来場者は2万5千人を超え、5時間以上の入場待ちの列ができるほどの熱気だ。目玉はパズドラのうまさを競うイベント。「すごく速い!」「正確だなぁ」。出場者の華麗なプレーがステージ上のモニターに映し出されるたびに、会場内にはどよめきが広がった。
パズドラはパズルをしながら敵のモンスターを倒し、自分のキャラクターを育成するゲーム。スマホの特性であるタッチ画面を生かし、「ドロップ」と呼ばれる玉を前後、左右、斜めに動かして同じ色のドロップを3個以上並べて消していく。単純なパズルと、ユーザー自身がゲーム内の主人公となるロールプレーイングゲームの2つの要素を組み合わせた点が目新しく、多くのファンの心をつかんだ。
ダウンロード数は昨年2月のサービス開始から約1年で1千万件を突破。口コミでじわじわと評判が広まってきたところに、昨年10月のテレビCM放映開始で人気が沸騰した。
ガンホーは平成14年創業。ソフトバンク傘下のゲーム会社で、会長の孫泰蔵氏はソフトバンク社長の孫正義氏の弟に当たる。
パズドラ効果でガンホーの業績も好調だ。25年1~3月期の売上高は前年同期の9・4倍、営業利益は75倍にそれぞれ拡大した。ジャスダック上場のガンホーの株価は、年初の8千円弱から5月14日には16万3300円をつけた。時価総額は一時、任天堂を超え、投資家の話題をさらった。
ゲーム雑誌出版のエンターブレインによると、24年の国内市場規模は前年比15・3%増の9776億円で過去最高を記録。このうちパソコンやスマホ向けにオンラインで販売するソフトは35・5%増の4943億円にのぼり、14年の調査開始以来初めてゲーム市場全体の過半を占めた。
スマホ向けゲームは移動時間などに手軽に楽しめることから、パズドラ以外にも多くのサービスが乱立している。グリーやディー・エヌ・エー(DeNA)が運営するゲームのほか、無料通話アプリ「LINE(ライン)」で提供されるゲームも人気だ。ヤマダ電機など、異業種も続々と名乗りを上げており、競争は激化する一方だ。
ガンホーが打ち出した次の一手は、パズドラを核にした「生涯顧客化戦略」だ。今冬、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」向けにゲームソフト「パズドラZ」を発売する。
ターゲットはスマホを持つ前の小学生。大人になってからもスマホやタブレット端末で遊び続けてもらおうというもくろみだ。
森下一喜社長兼最高経営責任者(CEO)は「長期的に人気を得るブランドに育てたい」と意気込む。
ガンホーは、ゲーム市場を日本だけに絞っていない。昨年11月に米国、同年12月に韓国、今年4月にはカナダでパズドラの配信を始めた。韓国でのダウンロード数は7月に入って100万件に達した。
次のヒット作の仕込みにも力を入れる。すべてのゲーム開発を森下社長の直轄にし、開発チームの人員は作業の進捗(しんちょく)状況に合わせて柔軟に入れ替える。予算管理や人員配置は専門の担当者が担う。
ただ、スマホ向けゲーム市場が市民権を得るためには、未成年への高額課金問題は避けては通れない。国民生活センターに保護者からの電話相談が相次いだことを受け、消費者庁はガンホーに対策を要請。ガンホーは16歳未満は5千円、16~20歳は2万円と月額利用料に上限を設けた。
「こうした取り組みが根付かない限り、パズドラの生涯顧客化戦略も本当の意味での成功とはいえない」(業界関係者)との声も聞かれる。ガンホーが描く青写真の成否が問われるのはこれからだ。