「今では、靴を買うときはもっぱら通販」。川崎市多摩区の主婦、佐藤美奈子さん（３６）が買い物に利用するのは、靴や衣料品などを扱う通販サイト「ロコンド」。店舗と違い、やんちゃ盛りの長男（５）に気兼ねなく、靴選びができるのがお気に入りだ。

　一度に１０足まで注文でき、３０日以内に返品すれば、その分の代金が返金される。配送・返送料は無料だ。佐藤さんも昨春、長男の入学式で履く靴を選ぶ際、ロコンドで５足を取り寄せ、「実際に着るワンピースと合わせながら、じっくり選べた」。

　２０１１年からサービスを開始したロコンドの会員数は現在約３５万人。最近は１カ月で１万～２万人ペースで会員数を増やす。委託販売まで含めた３～５月の取扱高は前年の約２．５倍。１４年は会員数１００万人、取扱高１００億円を目指す。

　店舗を持つ企業も、無料試着サービスの可能性に着目する。「ラクチンシリーズ」など自主開発の靴が人気の丸井グループは６月、配送・返送料無料の靴専門サイトを開設した。対象商品は約５０００品目で、商品を絞り込みやすいよう、商品を３６０度全方位から撮影した画像を充実させた。

　度付きメガネをネット通販するのは、全国に約１２０店を展開するオンデーズ（東京都豊島区）。眼科などの処方箋などの情報を注文画面に入力、最短５日で手元に届く。度が合わない場合は、１カ月以内に返送すれば無料交換できる。度数の強さにかかわらず、追加料金はゼロだ。

　矢野経済研究所によると、国内のファッション分野のネット通販の市場規模は、１１年度で前年比２１．５％増の６３６６億円、１３年度は７５３５億円にまで拡大を見込む。　

　国内のネット通販全体の市場規模は、１１年で８．６％増の約８．５兆円（経済産業省）で、ファッション分野は全体の１割近くを占める。

　着用感が重視されるファッション分野は、通販に不向きとされていたが、無料試着を可能にしたことで利用者が広がった。野村総合研究所の田中大輔上級コンサルタントは「返品率と利益率のバランスをとることで、送料無料のビジネスを実現している。子供のいる主婦などを中心に一定のニーズが期待できる」と分析している。