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ビール乱立状態、PB戦略見直しも ブランド価値低下危惧
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ビール大手4社の主なPBビール ビール各社が大手小売り向けに製造しているプライベートブランド(PB=自主企画)のビールが乱立状態に陥っている。
主導権を握られて下請け的な存在になるのを避けるため、PB商品の投入に慎重だったプライドも今やどこ吹く風。ビールの国内需要が縮小する中、小売りの強大な販売力で活路を開くため、店頭の陳列スペースをめぐる争奪戦は激しさを増す一方だ。ただ売れ行きは全般的に発売当初ほどの勢いはなく、メーカーの純粋なブランド(NB)商品との食い合いも懸念されるだけに、PB戦略の見直しを迫られる可能性も出てきている。
「売り上げは目標より少し欠けるところはある」。サッポロビールの野瀬裕之ブランド戦略部部長は2日、2013年6月中間決算の発表会見で、セブン&アイ・ホールディングス(HD)と共同開発したPBビール「セブンプレミアム100%MALT(モルト)」の売れ行きを問われ、表情を曇らせながらこう答えた。
12年11月に投入した100%モルトは、メーカーと小売りのブランドを並列表示する「ダブルチョップ」を国内のPBビールでは初めて採用。価格も350ミリリットル缶で198円と看板商品の「黒ラベル」よりも約1割安く、業界内の耳目を集めた。だが、上期(1~6月)の販売はNBの高級ビール「エビス」が前年同期比1.7%増だったのに対し、好調かと思われたPBビールは苦戦しているもようだ。
野瀬氏は「嗜好(しこう)性が強いビールの新ブランドが認知されるには、ある程度の時間がかかる」とした上で、「一時的な減少に着目するのではなく、長い目でみて判断すべきだ」と、腰を据えて取り組む考えを強調した。
安価なPBビールがヒットすれば、NBビールが価格競争に巻き込まれる-。そんな懸念から各社は従来、PBビールを数量限定販売に設定し、さらに小売り側のロゴも入れず、メーカー主導の形にこだわってきた。
国内シェアが4位と苦戦するサッポロは、こだわりを捨て去ってでも流通2強の一角を占めるセブン&アイとの関係強化で得られるメリットの方が大きいと判断。100%モルトは、そんな「苦渋の決断」から生まれた。
ところが、100%モルトに刺激された格好で、各社も大手小売りの陳列棚を確保すべく、せきを切ったようにPBビールの投入を加速。アサヒビールが小売り側のロゴを入れないPBをコンビニエンスストア上位3社やイオンなどと個別に展開すれば、サントリー酒類も6月にセブン&アイ限定のダブルチョップ「セブンゴールド ザ・ゴールドクラス」を投入した。
中には数量限定で発売したものの、人気を呼んだことから通年販売に「格上げ」されたPBもあり、NB以上にPBの拡販競争が激化。影響力が強くなった大手小売りの顔色をうかがうように、ビール各社がPBを送り出す構図が続く。「PBを手掛けないで大手小売りに袖にされるよりは、関係を強化した方がいい」(大手ビール幹部)というのが各社の本音のようだ。
小売り側が買い取るため在庫リスクがなく、販促費もかからないため価格を安くしても利益を確保できる。さらに新規顧客も開拓できるなどPBのメリットは大きい。ただ、PBの乱立を危惧する声も出ている。
「これだけの短期間にさまざまなPBを出せば、ビールそのものの魅力が下がり、メーカーのブランド価値の低下にもつながりかねない」。キリンビールの林田昌也マーケティング部長は、こう指摘する。
キリンのPBビールは12年6月にセブン&アイ限定で投入した「グランドキリン」だけ。安さを売りとするPBとは一線を画し、独自製法のホップや軽量化した瓶を使うなど差別化にこだわった。「PBビールも淘汰(とうた)が進み、価値のあるものだけが残る」(林田氏)との判断から、1つの商品をじっくり育てる戦略が奏功し、グランドキリンは当初の年間販売予定(8万ケース)の2倍近い15万ケースが売れる大ヒット商品となった。
少子高齢化や若者のビール離れが進む中、「商品戦略はローリスク・ハイリターンにしなくてはならない」(アサヒビールの小路明善社長)というのが各社の共通認識。その成功例の一つがグランドキリンだ。
ただ国内のビール市場に占めるPBの割合は数%にすぎず、NBを主軸とする経営戦略は今後も変わりそうにない。野村証券の藤原悟史アナリストは「PBのインパクトは薄れ、NBのブランド力を高める効果はなくなっている」と分析。
景況感の改善を背景に足元では高級ビールが好調なだけに、藤原氏は「いかに平均単価を上げていくかが最大の課題」と指摘する。
とはいえ、大手小売りの販売力は無視できないパワーを持つのも事実。ビール各社は自社のNBと小売り向けPBをいかに両立させ、ブランド力の向上につなげるのか。新たな戦略が求められる。(西村利也)