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破格の福利厚生、目指すは“究極のホワイト企業” 太っ腹のIT企業
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バブル崩壊とともに失われた日本企業の古き良き「家族主義的経営」。今や大企業ですら福利厚生費を圧縮し、保養所や社宅などはどんどん姿を消した。ところが、費用の掛かる福利厚生を手厚くしているにもかかわらず、業績を伸ばしているIT関連企業がある。通信サービス業のブロードエンタープライズ(大阪市北区)だ。家族の医療費まで負担する太っ腹な“超家族主義的経営”を貫いている。新興のIT企業=「合理主義の塊」というステレオタイプのイメージは崩れつつある。
「社員が笑顔でなければ、顧客を笑顔にできない」
同社の中西良祐社長には、こんな信念がある。社員が健康で仕事を楽しんでこそ、顧客を満足させ、業績も伸びるという考えだ。
この信念に基づき、同社には約30項目の福利厚生・処遇制度がある。
30項目は、携帯電話の無料貸与など多くの一般企業で導入されている「労使レベル」▽社長との昼食会などの「仲間レベル」▽家族の医療費まで負担する「家族レベル」-の3つに区分されているが、在籍年数や成績に関係なく、新入社員でも全レベルの制度を受けられる。
とくに医療費支給は、大企業でもなかなか見られない“破格”の制度だ。
健康保険制度を設けている民間企業の従業員は、医療費の3割を自己負担している。ところが同社では、この自己負担分のうち独身社員で年間3万円、既婚者は家族分を含め同6万円を上限に会社が支給するという。
こんな大盤振る舞いの制度では、さぞかし収益を圧迫してしまうのではと危惧するが、業績はおおむね好調というから驚く。
売上高は平成12年の創業時に1000万円程度だったが、現在は約9億円にまで成長。充実した福利厚生制度が、社員の士気を高めているようだ。
このユニークな福利厚生制度。実は社長からのトップダウンではなく、ほぼすべて社員からの提案という。
中西社長はサラリーマン時代、現場の声がなかなか上層部に届かないことに苦い思いをしたことがあり、創業時には「全員参加型経営」を貫こうと考えた。
この方針の下、どんな小さな提案やアイデアにも1件300円の奨励金を支給する「提案奨励制度」を平成23年にスタート。
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「最初は月に数件だったが、現在では300件を超える月もある」とか。制度化されたことで、多くの社員が声を上げるようになった。
同社の福利厚生の内容は、トップダウン型の大企業では考えられないユニークさにあふれている。
最近、始めた月2000円の昼食代を支給する制度は「たまにはホテルでランチを食べたい」という女性社員の声から生まれた。
独身の社員からは「ペットも“家族”」との声が上がり、医療費の支給対象にペットも認めた。
「行き過ぎた成果主義でチームワークや長期志向が失われ、社内の雰囲気がぎくしゃくしてしまった」という企業の失敗例は多い。「社員を大事に」と言いながら行動が伴っていない経営者は多く、言行一致してこそ社員との信頼も深まると中西社長は考えている。
サービス残業やパワハラなどで従業員に非合理的負担を強いる「ブラック企業」も取り沙汰される中、中西社長は「究極の“ホワイト企業”を目指す」と意気込んでいる。(田村慶子)
本 社=大阪市北区太融寺町5-15
設 立=平成12年
資本金=9000万円
売上高=8億9000万円(平成24年12月期)
従業員=80人