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【ITビジネス最前線】米企業の資金調達法 VCモデルに陰り
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■スタートアップ時 エンジェルリスト型に転換
スタートアップ企業の資金調達方法に大きな変化が生まれている。不特定多数の人からプロジェクトに対する資金を募るクラウド・ファンディングのような仕組みで、アメリカのスタートアップは、今や個人投資家から直接、資金調達することができるようになった。これまでテクノロジー業界の成長に大きな貢献をしてきた従来のベンチャーキャピタル(VC)モデルに終わりが来るかもしれない、そんな大転換だ。
◆複数の個人投資可能
VCのモデルは、裕福な個人出資者と、彼らのお金をプロの管理運用者に渡す投資ファンドから成り立つ。通常、VCと呼ばれるのはその管理運用者のことであり、どのスタートアップ企業に支援の価値があるか見いだし、決断する専門家だ。VCは、無限責任パートナーであるのに対し、個人出資者は有限責任のみ負うリミテッドパートナーである。専門家としての知識を提供するのと引き換えに、VCは投資ファンドから通常、年2%の管理報酬を受け取り、それに加えて、資産価値が上昇すればその20%程度を成功報酬として受け取る。
ところが、VCがスタートアップに対して行う投資の90%が失敗するというのが現実。そこで、成功した1、2社はその他すべての失敗した投資を補うためによほど大きな成功をおさめなければならない。その結果、VCにとって5000万ドルから1億ドル程度で売却されるであろう「小規模の」スタートアップは興味の対象外になってしまう。しかし、これらのスタートアップに大きな関心を寄せる投資家もいる。自らの所有する資金を投資する個人投資家、すなわちエンジェル投資家と呼ばれる人たちである。
AngelList(エンジェルリスト)は、こうした裕福な個人投資家と、財源を求めるスタートアップ企業を結び付けるサイトだ。以前は、スタートアップは無料でリストに掲載され、リストに掲載された企業にアクセスしたい個人投資家も適格投資家としての証明を得るために少額の手数料を支払うのみだった。個人の出会いを生み出すデーティングサイトと同じような仕組みを提供するサービスというわけだ。
しかし、エンジェルリストは8月「シンジケート」という新サービスを発表し、その仕組みが大幅に変わった。シンジケートは、エンジェル投資家が直接企業に投資するだけではなく、伝統的にVCが用いてきたのと同じような手法で、複数の個人がシンジケートを組んで投資することを可能にした。
例えば、エンジェル投資家として著名なエヴァン・ウィリアムズが私の始めたスタートアップに投資しようと考えたとすると、彼は個人的にそのうちの25%を引き受け、残りをシンジケートに割り当てることができる。エヴァンと共同投資家の拠出した資金はファンドにプールされ、エヴァンは、シンジケーターとして20%程度の成功報酬を投資利益から受け取ることができる。
お分かりの通り、これはまさにVCが採用してきたモデルと同じだ。これまでVCに資金運用を預けてきた富裕層は、実績のあるエヴァン・ウィリアムズのようなエンジェル投資家を直接後押しすることができるようになる。彼らエンジェル投資家は、実際にスタートアップを創業する起業家たちと親しいことが多いのも特徴だ。
こうした資金調達を可能にしたのが、昨年オバマ大統領の署名したJumpstart Our Business Startups Act、通称JOBS法だ。これによって、スタートアップ企業やVCは、現在資金を募っているということを公言できるようになった。JOBS法以前であれば、企業が証券発行を通じて資金調達をする場合、その金額に関わらず1930年代に成立した法律に基づいて証券取引委員会へ登録しなければならず、そのうえ発行時の情報開示や継続的な定期報告などの義務が課せられるという状況であった。
証券取引委員会への登録なしに証券を発行できるのは、適格投資家か、十分な知識を持つ投資家に対して発行するときだけであって、それ以外に一般個人から出資を募るために宣伝や勧誘行為をすることも禁止されていたのだ。
例えば、スタートアップのローンチパッドと呼ばれるイベントはたとえ不法行為とはいえなくても、極めてグレーな領域だったといえる。ローンチパッドでは、さまざまなスタートアップがプロジェクトのデモを発表し「近日、わが社は投資ラウンドを締めくくるところだ」などと述べるからだ。もし、起業家が、それを超えて「ご清聴ありがとう、今われわれは200万ドルの資金調達を行っているので、興味があれば、ぜひ声をかけてください」と言えば、それはアウトだったわけだ。
◆非公開も少額募集
JOBS法によりこれが合法となり、スタートアップのような非公開企業も、証券取引委員会への登録なしに、不特定多数の投資家に対し、少額の募集を行うことが可能になった。また、資金調達の取引窓口として、登録済みの証券会社に加えて、投資を募集するウェブサイトもファンディングポータルとして認められることになった。
ここにきて、2010年に創業したエンジェルリストの重要性が一段と増したわけだ。エンジェルリストのプラットホームは、投資家がいくら投資する適格があるのか精査し、認定するのに役立ち、スタートアップ企業がいちいち個人投資家を調べる重荷を負う必要はない。また、シンジケートによって、名のあるエンジェル投資家が、注目するスタートアップを取り上げて一般投資家に参加を呼びかけることまでできるようになった。
個人投資家は、VCに頼らざるとも合法的に直接投資できるようになった。従来のベンチャーキャピタルファンドは、その精査の仕組み、ネットワーク性、資金量のいずれをとってみても価値の低下を否めない状況だ。VCが提供してきた知識や専門的な判断は、エンジェルリストのようなプラットホームを使えば十分手に入れられる。
また、VCモデルでは、個人投資家がファンドに資金を長期間預けなければならない点が嫌われてきた。時には10年間も投資額に手を付けられないというのは、管理報酬を除けばVCモデルの一番の欠点と言えるだろう。これも富裕な個人投資家に重点を置く新しいエンジェルリスト型のモデルでは問題にならない。投資家は、自分の好きな時に、無理のない範囲で投資できるし、個人的な判断と選択にしたがって好きなように投資することもできるのだから。従来のVCモデルに陰りが見えてきた米国の動向は、日本の読者にとっても注目に値する動きといえるだろう。
文:イジョビ・ヌウェア
訳:堀まどか
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【プロフィル】Ejovi Nuwere
イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者のひとり。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。