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日系企業、東南アジアでM&A過去最高 「脱中国」加速

ニュースカテゴリ:企業の経営

日系企業、東南アジアでM&A過去最高 「脱中国」加速

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日本企業の東南アジアでのM&A件数  1~9月に公表された日本企業による東南アジア企業へのM&A(合併・買収)の件数と金額がいずれも過去最高を更新したことが分かった。

 日中関係の悪化や人件費の高騰で「脱中国」が加速する一方で、経済が成長するタイなど東南アジアの投資先の魅力が高まっていることがある。製造業に続き、金融などのサービス業の投資も拡大。円安で様子見だった海外企業へのM&A全体の金額も回復傾向で、買収資金が膨らむ円安下でも海外戦略を進める動きが加速しそうだ。

 M&A助言会社のレコフによると、東南アジアでの1~9月のM&A(出資、事業買収を含む)は70件で、同期間で最高だった2011年の65件を超えた。タイが23件(前年同期の約5倍)で最も多く、ベトナム13件、インドネシア10件と続く。

 金額は計7485億円と前年同期の13倍超の勢いだ。三菱UFJフィナンシャル・グループが7月に発表した、アユタヤ銀行(タイ)の買収(最大5600億円)が押し上げの主因で、日本企業の東南アジアでのM&A案件で過去最高額。

 このほか、明治安田生命保険もタイの生命保険に約700億円を出資すると発表し、ANAホールディングスは約25億円を投じ、ミャンマーの航空会社に資本参加する。製造業に続き航空や金融など、消費拡大に伴うサービス業向けの投資が目立つ。

 一方、日本企業の中国でのM&Aは減少傾向だ。香港、台湾を除く1~9月の中国本土向け件数は、前年同期比約4割減の20件。金額もほぼ半減の142億円にとどまった。

 足元ではインドネシアの通貨安など新興国経済の減速懸念もあるが、第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは「東南アジアが世界の経済成長の中心になるとの見方が強まり、中長期的には拡大傾向が続く」と分析。一方で「中国は日中関係悪化や人件費の上昇で撤退を考える進出企業も多い」(同)と指摘する。

 日本企業の海外M&A全体も活気づいてきた。1~6月までは「円安による、買収に必要な資金のコスト増のほか、株価、為替の変動が大きく、様子見の企業が多かった」(市場関係者)。実際に件数も前年同期から半減に落ち込んだが、国内金融市場が落ち着いたこともあり、大型M&Aが相次いだ。

 7~9月のM&Aは金額が4~6月比で約97%増の2兆698億円と、国際競争をにらみ積極的なM&Aも目立つ。

 9月には、LIXIL(リクシル)グループと日本政策投資銀行による独住設機器大手の買収(約3800億円)や、サントリー食品インターナショナルの英国飲料ブランド取得(約2100億円)が公表された。(高橋寛次)

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