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中国の工業製品指数も水増しの疑い 中央と地方でなぜ乖離が生じるのか

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

中国の工業製品指数も水増しの疑い 中央と地方でなぜ乖離が生じるのか

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中国各地の工業増加値(1~7月)  中国国家統計局が公表している工業統計に、生産した工業製品の付加価値の増減を表す「工業増加値」という指標がある。工業活動の成長を知る手段として、中国当局が重視するとされてきた。ところが、国家統計局による中央発表と地方が発表する値に大きな差があり、日本のシンクタンクは地方発表の指標が水増しされている疑いを指摘する。国内総生産(GDP)、貿易統計など、中国発表の統計はとにかく信頼性が低いが、工業製品でも同様だとすれば虚勢病は深刻だ。

 正確なら好景気のはずだが…

 中国の工業増加値は、工業製品の最終価格などを基に総生産額を割り出し、そこから人件費や原材料費などのコスト分を引いて割り出す。中国国家統計局は前年同期と比較した伸び率を公表。工業製品の付加価値がどれだけ増減しているのかを示す指標だ。

 日本のシンクタンクが指摘するのは、中央が発表する全国値と、地方発表の値との乖離(かいり)があまりにひどく、指標そのものの信頼が失われていることだ。

 中国が1~7月の全国値として提示して公表している伸び率は前年同期比9・4%。ところが31市・省・自治区が個別に提出している値を見ると、25省・市・自治区が全国値を上回り、下回るのはわずか6省・市しかない。

 地方発表が正確なら、中国は沸き立つような好景気に包まれていなければならない。ところが中国の実態はGDP伸び率が鈍化し、景気の減速が目立っている。

 小役人の点数稼ぎ

 なぜこのような乖離が生じるのか。

 日本総合研究所の三浦有史主任研究員は「地方が中央への点数稼ぎのため、水増しをしている可能性がある」と指摘する。仮に地方の指標が正確であれば、中央発表の工業増加値は10%を優に超えなければならないという。

 一方、中央発表側の数字について、三浦氏は「地方の水増しを認識し、独自のデータで計算しているようだ」とする。

 当局は地方の水増しを抑制できないまま、自身のデータを入れ込んで統計を公表しているのだ。

 実際、中国国家統計局は今年6月、広東省中山市の横欄鎮(町)が2012年の工業総生産を実態の4倍近くに膨らませて報告していたと公表。休業した企業が報告対象となっていたほか、虚偽のデータの報告が判明したといい、すでに事態を把握している。

 香港を介した貿易統計の水増しなど、中国では経済統計の信頼を揺るがす事態が相次いで発覚している。中国政府にとって、対処は急務だ。

 小役人の“利己ノミクス”

 日本のアベノミクスを意識して、中国国内では自国の経済政策を「リコノミクス」と称している。李克強(り・こくきょう)首相の経済政策にひっかけた造語で、中国では今年上半期の経済10大流行語に選ばれたそうだ。

 とはいえ、リコノミクスの成否を示すのがまさに経済指標。そもそも水増し疑惑がなくても、工業増加値は製品を作れば作るだけ数字が膨れる仕組みになっており、製品の在庫がいくら積み上がっても影響しない。果たしてこれで成長を測ることができるのか?

 リコノミクスが、地方の小役人の“利己ノミクス”に振り回されていたのでは先が知れる。中国は正確な指標を公表し直すべきだろう。世界の信用を得るには、信用できる統計からだ。(平岡康彦)

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