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【底流】ガス資源国で日中競争激化 “日本流”で札束攻勢と差別化
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中央アジアのトルクメニスタンや南太平洋の海洋国パプアニューギニアなど、小国ながら手つかずの天然ガス資源国で、日本と中国の受注競争が激化している。資源狙いのバラマキ外交で触手を伸ばす中国に対抗し、日本の大手商社やプラントメーカーは進出を加速。産業多様化を図る資源国にとっても、日本がお家芸とするガス化学や肥料のプラント技術の魅力は高い。国内企業は技術供与や政府の金融支援、人材育成など幅広く提供する“日本流戦略”で、中国勢の札束攻勢との差別化を急ぐ。
「天然ガスの加工技術など日本の最新技術が産業の多様化に貢献する」
9月に訪日したトルクメニスタンのベルドイムハメドフ大統領は、両国官民の交流を図る「日本トルクメニスタン・フォーラム」で講演し、日本企業に自国への進出を呼びかけた。
中央アジア内陸部に位置する同国は、世界第4位の天然ガス埋蔵量を持つ隠れた資源国。パイプラインを通じて、中国の天然ガス輸入量の約5割を担っている。日本企業の商談が増えたのは、2007年に現大統領が就任し、開放路線に転じてからだ。
09年に初めて訪日した現大統領は、日本の技術力を高く評価し、積極的な誘致に乗り出した。化学プラントや肥料プラントを建設し、豊富な天然ガス資源に付加価値をつければ、外貨獲得や雇用拡大にもつながるとの狙いだ。
海外事業の強化を急ぐ日本企業との思惑が一致し、同フォーラムでは千代田化工建設や新日鉄住金エンジニアリング、双日の3社が、天然ガスを液体燃料に変質するプラント建設に参画することで合意した。このほか、プラント関連だけで7案件に日本企業が参画する合意文書に調印するなど、化学プラントの国際入札で苦戦が続く日本企業に大きな成果となった。
近年、商社やプラントメーカーは、トルクメニスタンなどの資源国での活動を強化している。
双日は2010年にトルクメニスタンで事務所を開設。今も日本企業で唯一、日本人駐在員が常駐しており、政府や国営企業との橋渡しに奔走する。資源国だけに経済成長も着実で、双日の喜多敏彦常務は「鉄道や電力など他のインフラ受注にもつなげたい」と意気込む。
また、三菱商事は2002年にトルコ財閥のチャルックグループ傘下の建設会社GAPと組み、川崎重工業と共同でセメントプラントを受注した。トルコとトルクメニスタンは民族的な関係が深いメリットに注目し、日・トルコのタッグで実績を積み上げる“勝ちパターン”を構築した。
三菱商事は年内にも、トルクメニスタン国営化学公社が計画する尿素肥料プラントの正式受注を目指すという。政府も、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資などで、こうした事業を全面支援する体制だ。
インフラ輸出と天然ガスの資源外交を両立できる有望国は、トルクメニスタンだけではない。資源に恵まれるパプアニューギニアでも「日本企業の存在感が高まり、商機が拡大している」(杉山茂・国際協力機構パプアニューギニア事務所長)という。
同国では、米石油大手や日本企業が参画する複数の液化天然ガス(LNG)の開発案件が計画されている。パプアニューギニアもトルクメニスタンと同様、LNG輸出だけでなく、ガスを使った産業育成で雇用を創出しようと、技術や人材育成に優れた日本企業の進出に期待を寄せる。
だが、両国には中国も働きかけを強めている。中国の習近平国家主席は9月上旬、「シルクロード経済ベルト構想」と称して中央アジア4カ国を歴訪した。トルクメニスタンとは、20年までにガス輸入量を現在の3倍以上に増やすことで合意するなど、中国マネーで存在感を高めている。
同様に中国はパプアニューギニアでも、約2800億円を上限とする借款を行うなど、大盤振る舞いが伝えられた。資源に加え、周辺は世界有数のマグロやカツオの漁場で、食糧資源の確保も狙いのひとつとされる。「有事の際に戦艦を展開できるよう、港湾投資も加速している」(関係者)と、中国の札束攻勢はとどまるところを知らない。
中国のバラマキ戦略に対抗するには、技術力を武器にした経済協力や日本流民間ビジネスでいかに親日国を増やせるかにかかっている。(上原すみ子)