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海外情勢
中国人観光客、世界各地で争奪戦 海外旅行ブーム 渡航先の消費拡大
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今や世界の観光産業の牽引(けんいん)役とも言える中国人の海外旅行者。国連世界観光機関(UNWTO)がこのほど発表した統計によると、昨年、海外旅行をした中国人の数は前年比約20%増の延べ8300万人に達し、渡航先での支出額も1000億ドル(約9兆7600億円)を超え、前年比40%増となった。
中国国営新華社通信によると、こうした中国人の海外旅行ブームと旅行先での消費拡大を受け、今年は多くの国々が中国人旅行者誘致のための取り組みを強化しているという。
「中国人観光客の1人当たりの平均消費額が、他の外国人観光客の2~3倍に相当する70万ウォン(約6万3500円)となる」(韓国のソウル放送)韓国もそうした国の1つだ。
韓国の聯合ニュースによると、韓国は今年の国慶節(中国の国慶節、10月1日)の大型連休中、中国人観光客が昨年同期の1.5倍になると見込んでおり、官民を挙げた誘致策を展開した。
昨年の9月29日から10月6日にかけ、中国人観光客による売り上げが前年同時期の220%増となった現代百貨店も若い観光客の増加を見越し、中国向けのプロモーション活動を強化した。
中国からの団体旅行、個人旅行に回復の兆しが見え始めた日本でも、中国人観光客を囲い込もうと様々な取り組みが行われている。
横浜中華街が昨年中止した国慶節の祝賀パレードを再開させたほか、東京メトロは国慶節の今月1日から中国語版リーフレットの配布を開始。小田急電鉄も9月28日から新宿駅で外国人観光客向けのショッピングキャンペーンを開催した。
一方、国慶節の大型連休中、春節に次ぐ数の中国人観光客が訪れたタイでは、バンコクの大型商業施設が割引セールを展開。タイ以外でも、カンボジアやラオスといった国々で中国人観光客が増加傾向にある。今年上期、中国人観光客が50%増となったカンボジアでは中国との直行便が増便される見通し。
中国からの旅行者獲得に積極的になっているのはアジアの近隣諸国だけではない。欧州でも新たに英国が中国人観光客の誘致に乗り出した。
英紙デイリー・テレグラフによると、英国は中国旅行者向け査証(ビザ)の発行手続きの簡素化を検討しており、他の欧州諸国でも複数国で同時使用できる共同ビザが導入される可能性があるという。
これまで英国は、独仏など主要な欧州諸国が加盟しているシェンゲン協定に加盟しておらず、小売業界などから中国人観光客の増加が生む経済成長が阻まれているという声が上がっていた。
英フィナンシャル・タイムズによると、英国滞在する中国人観光客の平均消費額は、世界の海外旅行者の平均消費額のほぼ3倍となる1676ポンド(約26万1000円)。共通ビザ実現の可能性に、同国の小売業界でも期待感が高まっている。
同様に中国人観光客増加のための取り組みを始めたのがロシアだ。
国営ロシア通信の中国語サイトによると、世界観光の日である9月27日、ラチコフ連邦観光局長官が「中国人観光客が外国人観光客の中で2番目に多い97万8000人に達した」として、今後の経済波及効果に期待感を示したという。
財布のひもがゆるい中国人観光客を囲い込もうと、各国ともあの手この手の策を講じている。(上海支局)