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眼鏡のJINS、世界制覇へ大勝負 「米中を押さえればどの国でも勝てる」
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ジェイアイエヌの連結業績
眼鏡専門店「JINS(ジンズ)」を運営し、ここ数年急成長を遂げてきたジェイアイエヌが、次の成長を賭けた大勝負に打って出る。2010年に進出した中国に続いて、14年秋には世界最大規模で競争も厳しい米国市場に参入する。商品企画から製造、物流、販売まで自ら管理するSPA(製造小売り)の業態を採用し、価格破壊を主導してきた「眼鏡業界のユニクロ」は最終目標の世界制覇に挑む。
「米中両国を押さえれば、どの国に行っても勝てる」
ジェイアイエヌが米国進出を発表した今月16日、13年8月期決算のアナリスト向け説明会に臨んだ田中仁社長はこう力説した。
計画では、14年11月に東海岸のデラウェア州に資本金1000万ドル(約9億7400万円)の全額出資子会社を設立。まずサンフランシスコ市に旗艦店をオープンし、5年後に100店舗まで増やす計画だ。店舗販売に加え、ネット通販にも乗り出す。
米小売り大手のウォルマートや、「レイバン」などの有名ブランドを抱える伊ルクソティカなどがひしめき合う米国だが、販売価格は100ドル以上の商品がほとんど。
これに対し、低価格・高品質で消費者の支持を得てきたジェイアイエヌは「49.9ドルで勝負でき、品質でも上回る」(田中社長)と勝ち残りに自信をみせる。受け渡しまでの時間も、1台でレンズのカットや研磨をこなす最新の自動加工機を導入し、ライバルが1週間程度のところを最短15分に抑えるつもりだ。
米国市場は日本の5倍近い約1兆9000億円と桁違いに大きい。田中社長は「某SPAは米国事業が赤字なのになぜ続けるのか」と、経営の師と仰ぐ柳井正会長兼社長率いるファーストリテイリングを引き合いに出し、世界制覇の達成には米国攻略が欠かせないことを強調した。
海外では、現在18店舗を運営する中国でも来春までに10店舗以上増やす計画だ。
ジェイアイエヌの13年8月期連結決算は、最終利益が過去最高の34億円を記録するなど絶好調だった。液晶モニターの青色光をカットして目の負担を抑えるPC用や花粉対策用など単価の高い機能性商品が受け入れられ、既存商品の販売も底上げすることができたからだ。
国内での店舗展開も順調で、期末には205店と1年で45店も増加。中期目標の500店達成も見えてきた。5月には念願の東証1部上場を果たしている。
もっとも、大手証券のアナリストは「投資家は好業績を評価するより、成長力の陰りを懸念し始めている」と指摘する。実際、株価は5月末に年初来高値の5310円をつけたが、8月中旬以降は3000円台半ばで推移していた。
国内市場は、1990年代半ばの6000億円から、低価格化の激流に飲み込まれて3分の2まで縮小した。価格破壊を仕掛けたジェイアイエヌといえども、いつまで絶好調を維持できるか分からない。前期は最高益を達成したものの、4月に上方修正した利益計画には届かなかった。
今期は業績拡大を牽引(けんいん)したPC用の需要が一巡。来春の消費税率引き上げも気がかりだ。さらに今年は不正アクセスで直販サイトが閉鎖に追い込まれる事態に直面。閉鎖は3月から8月まで半年近く続いた。
「右肩上がりだったのが少し踊り場に来ている。スタッフ、店舗が増え、さまざまな課題が現れている。それらをしっかりと認識し、次への成長に備える時期」
強気一辺倒の「ビッグマウスぶり」で知られる田中社長も、急成長の“ひずみ”を認める。
2001年に福岡市で1号店をオープン、「Zoff」のインターメスティック、OWNDAYS(オンデーズ)と並ぶ「新御三家」として業界を席巻してきたジェイアイエヌも常に順風満帆だったわけではない。リーマン・ショックに伴う景気悪化が深刻化した08年ごろには、競合の追撃で安さの魅力が薄れたことが重なり、09年8月期まで2期連続で最終赤字に陥った。
このとき、柳井氏の下へ相談に赴いた田中社長は「(39円まで下落した)今の株価は将来性がないと思われている」と厳しい言葉を突きつけられ、同社の進むべき方向を冷静に再確認するきっかけになったという。
国内市場が見通せない中、さらなる成長には海外事業の拡大が不可欠だ。ファーストリテイリングとは売り上げ規模で30倍以上の開きがあるが、米国進出がスムーズに運べば、米国事業の黒字化に手間取るファストリに先んじることもできる。だが必要なのは積極策だけではない。目の前の課題から目をそむけず、足場固めへの目配りを怠らない経営感覚も欠かせない。(井田通人)