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進化する「モスライスバーガー」 さば味噌に自信、高齢者にも対応
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モスライスバーガーの新商品を手にする太田恒有さん(左)と開発担当者の荒木光晴さん 昭和62年の発売以来、四半世紀を超える長寿商品となっているモスフードサービスの「モスライスバーガー」。日米食文化の融合ともいえるユニークな商品の原点は、日本のファストフード「焼きおにぎり」だ。
モスライスバーガーの開発が始まったのは発売の2、3年前。当時、農林水産省は国産米の消費拡大を目指し、外食産業にコメの活用を求めていた。モスフードサービスの開発担当者は、コメをバンズ(パン)に挟む具材として利用することを考えていた。だが、おにぎりにヒントを得て、ライスプレート(コメ)に具材を挟むことに発想を転換したことが、モスライスバーガーの出発点となった。
最も苦労したのは、ご飯をふっくらとした状態に保つこと。手に持ったとき、ぼろぼろと米粒がこぼれては食べにくい。硬くすれば食感が悪くなり、ご飯のおいしさが損なわれてしまう。
現在、商品開発部商品開発グループリーダーを務める太田恒有氏は、先輩たちから「『コメをパンのような丸い形にきちんとくっつけることが大変だった』と聞かされた」と、当時の開発担当者の苦労ぶりを明かす。
この課題を解決してくれたのは、すしロボットを参考に独自に開発した成型機だ。この成型機を使うことで同じ形や固さのライスプレートを製造することに成功。焼きおにぎりのようにプレートの表面にしょうゆを塗り、軽く焼き上げることで、香ばしさが増しただけでなくご飯が崩れないように仕上げた。
モスライスバーガーの発売は大きな反響を呼んだ。工場では作業員が足りなくなり、事務スタッフが一時、応援に出向いたほどだ。平成4年には、「コメのまったく新しい消費を拡大した」との理由で農林水産大臣賞も受賞した。
ご飯のハンバーガーは海外の消費者の心もつかんだ。台湾では、3年の進出時からモスライスバーガーを販売。現地の約100人に味見をしてもらい、塩味や酸味を薄めにした「台湾版」の焼き肉ライスバーガーを開発した。台湾人は外食志向が強い。「満腹感があるように」と日本版よりコメの量を約2割増やしたことで、人気メニューに成長した。
モスライスバーガーは国内でも進化を遂げる。10月29日から来年3月下旬までの期間限定で「さば味噌 骨までやわらか仕込み」(360円)と「彩り野菜のきんぴら」(310円)を販売する。
若者が主要な顧客層となっているファストフードの常識を変えようと、2商品のターゲットは高齢者にまで広げた。太田氏は「お年を召した人にも抵抗なく食べていただける商品」と自信をみせる。
これまでのモスライスバーガーの具材は、「きんぴら」「焼き肉」「かき揚げ」の3種が定番だった。若者がボリューム感のある具材を好むからだ。きんぴらも硬めで、高齢者には不向きだった。
ただ太田氏には、外食産業は「世代を超えてみんなが集まれる場所」だという理想があった。そこで、開発担当者の荒木光晴氏に「あなたのお母さんに食べさせたいライスバーガーを作ってほしい」と指示。日本料理などの板前から転職した経歴を持つ荒木氏は、以前から高齢者から子供にも好まれる素材としてサバに着目していたのだという。
「魚の骨をピンセットで取れば、食材にダメージを与えておいしくなくなる」(太田氏)。そこで、中骨を取り除いたサバを圧力釜で加熱する製造工程で、骨をやわらかくしながらも身のふっくらとした食感を残すための適切な加熱時間と温度を見つけ出して商品化にこぎ着けた。
きんぴらも、高齢者がゴボウとニンジンをかみ切れるように軟らかくした。色の淡いしょうゆを使うことで、素材本来の彩りも生かした。さらに高野豆腐だけ別工程にして、他の素材より少し濃いめのしょうゆで味付け。高野豆腐に含ませたかつお昆布だしなどの上品な味が、食べたときにアクセントとなって口の中に広がるようにした。
「母親の味」を味わえる新たなライスバーガーは、食生活が多様化する中で、改めて日本食のおいしさを伝えることができるかもしれない。(鈴木正行)