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日本製紙と日本コカ・コーラ 森と水の保全活動協働協定
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日本製紙の社有林と日本コカ・コーラの工場の分布図。両社の関わりのある地域の森林と水系保全に向けた活動を展開していく
日本製紙と日本コカ・コーラは今月、森林資源と水資源の保全・保護に関して2021年3月末までの協働活動協定を締結した。製紙事業をはじめエネルギーや化学素材などの分野で森林資源を活用する日本製紙と、飲料製造で多くの水を使う日本コカ・コーラがそれぞれ、これまで培った環境技術や保全活動の経験などを生かしながら、森林と水資源の保全に向けた活動を展開していく。
協定締結のきっかけは09年。日本製紙グループ本社が四国コカ・コーラボトリングを完全子会社化したことに始まる。工場の操業改善ノウハウや管理部門の共有化を進める中、「環境分野でも協力できないか」という何気ない思いつきからだった。
両社に共通するのが、製造過程で“水”という自然資源を大量に使用すること。日本製紙は森林保全を、日本コカ・コーラは水資源保全に向けた活動を展開しており、「経験や知識を相互に生かしていけば、より効率的に森林と水資源の保全を進めることができる」(日本製紙の芳賀義雄社長)と判断した。両社が持つ環境技術などは「国内民間企業ではトップクラス」(日本コカ・コーラのティム・ブレット社長)と自負するからだ。
「紙の原料である木資源の持続的な管理は事業の生命線にかかわる」(芳賀社長)ことから、日本製紙は保有する全国400カ所、約9万ヘクタールの社有林を活用した森林の保全事業や植樹活動に積極的に取り組んできた。中でも、特に目を見張るのが「容器内挿し木」という独自技術を活用した森林の再生と保全活動だ。
この技術は、特殊な培養室と培養容器でさまざまな光の波長、十分な水分、大気中の2~3倍の炭酸ガスを与える環境をつくることで、植物の光合成能力を最大限に引き出す。挿し木では根が出なかった植物でも発根を可能にした。
同技術を応用して、国立科学博物館・筑波実験植物園が保全する琉球列島の絶滅危惧植物24種類の増殖に成功。国立遺伝学研究所の桜の後継木を11年までに78種類も育成した。もともとは植樹促進のために開発された技術だが、今では森林の再生や保護に大きく寄与している。
一方、日本コカ・コーラの環境技術は水に特化。製造過程で使用した水と同じ量の水を自然に還元し“実質的な水資源使用量ゼロ”を実現するプロジェクト「ウォーター・ニュートラリティー」を進めている。洗浄水など使用済みの水を特殊なフィルターに通して真水に戻し、90%以上を再利用。残り10%はポンプの冷却水などに使う。
さらに最新の設備が整う北海道工場では薬剤殺菌に代わり電子ビームの照射による殺菌方法を採用、ボトルの洗浄に使う水を半減。また全国27カ所の各工場では水源を特定、水量や水質を分析した上で水源の自然環境に合わせた水資源保護活動を進める徹底ぶりだ。
協働活動の第1弾として、日本コカ・コーラの主力工場の水源地と日本製紙の社有林がある群馬県片品村で11月から、森林と水資源保全のためのプロジェクトを始める。同村で行う次世代環境教育活動の開催や、同村の絶滅危惧種であるシラネアオイの再生と保護を支援する。今後は、日本製紙の社有林と日本コカ・コーラの工場とが重なる地域で実施する。「両社と各地域が一体となった環境活動の推進で、水資源と森林保全の質を上げる」(日本製紙の藤沢治雄執行役員)狙いだ。(西村利也)