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ホンダ「マザー工場」の効果は? 国内雇用確保、他産業への波及期待
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高効率な生産ラインでコスト競争力を高めたホンダの寄居工場=7日、埼玉県寄居町 ホンダが23年ぶりに国内に建設した新工場、寄居工場(埼玉県寄居町)で8日までに小型車「フィット」のフル生産が始まった。「国内最後の乗用車工場」ともいわれる同工場は輸出を行わず、最新鋭の生産技術を確立して海外新工場に技術を移す「マザー工場」として運用する。この試みが成功すれば、人口減で消費が頭打ちの国内に工場を新設する動きが他業界にも広がり、設備投資や雇用の拡大につながる可能性もある。
「会社が発展するためには、製品技術に加え、生産技術の進化も必要で、それを日本の寄居が担っていく」
7日の新工場披露会の記者会見で、伊東孝紳社長はこう強調した。
寄居工場の年間生産能力25万台。高効率な生産ラインで、コスト競争力を高めたことに加え、1台当たりの二酸化炭素(CO2)の排出量を従来比で3割減らせるなど環境負荷も抑えた。ここで培った技術は今後1年半以内に、来春稼働予定のメキシコをはじめ、中国、ブラジル、タイといった新興経済国の新工場に移管していく。
このため、すべての工程について、「従来の常識を疑うところから着手した」(工場責任者の河野丈洋主任技師)という。
例えば、車のボンネットなどを骨格と結合する溶接ライン。狭山工場では、設置スペースが狭いという理由で昔から溶接ロボットを車の両側に置いていたが、これを前後に配置するという大胆な変更を行った。これによりロボット16台を10台に減らすことに成功した。
また、塗装工程では、ボディーカラーを吹き付ける塗料に、衝撃を吸収する機能をあらかじめ付け、塗装膜のひび割れなどを防ぐ、「中塗り」と呼ばれる工程を不要にする技術も採用。CO2の排出量は既存の製造法に比べ42%減った。
こうした最新の製造技術に加え、小型車専用の少品種大量生産によるコスト削減効果で、フィットの採算性は大きく向上した。フィットは低価格帯の車種ながら、ホンダを販売面のみならず、収益面でも大きく支える「屋台骨」の役割がさらに増すことは確実だ。
現在、主要メーカーの国内向け設備投資は維持や補修がほとんどだが、ホンダの寄居工場のような大型の新規投資が増えれば雇用や賃金への波及、消費増大や企業収益拡大につながる。新工場披露会には、地元の上田清司埼玉県知事や寄居町長や同県小川町長に加え、茂木敏充経済産業相も出席。新工場を呼び水とした新たな投資への期待が大きいことをうかがわせた。
埼玉県内では、早くも自動車部品メーカー2社が新たに工場を作るなど“ホンダ効果”が出ているという。(飯田耕司)