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“現場力”鍛える東邦ガスの技能選手権 「職場代表だけに恥かけない」

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“現場力”鍛える東邦ガスの技能選手権 「職場代表だけに恥かけない」

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「ガス機器修理」競技に真剣な表情で臨む選手(名古屋市熱田区の東邦ガス本社)  製造業にとって何よりも大切な「現場」。技術の向上とともに、昨今、技術をいかに若手に伝承するかが大きなテーマだ。“現場力”を高めようと、都市ガス会社の東邦ガスは、グループをあげて「技能選手権」を開催している。予選を勝ち抜いた選手が、ガス機器の修理技術や点検技術など種目ごとにそのスピードや正確さを競う。競技会場には職場の上司や同僚が応援に…。職場の“一体感”醸成にも大きな効果をあげているのだ。

 ベテラン技術者の“厳しい目”の中で

 10月24日。名古屋市熱田区の東邦ガス本社で、「技能選手権2013」の競技の1つ、「ガス機器修理」が開かれた。修理を担当する本店の650人と販売店(ガスショップ)の1150人の中から、予選を勝ち抜いた27人が出場した。

 ガス機器修理競技は、経験年数などによって4つのコースに分かれている。このうち高度な修理技能をもつ入社2~6年の若手社員を対象にしたコースでは、5人が挑んだ。

 会場には5台の給湯器が並べられ、選手紹介後、いっせいに競技を開始。「浴室暖房乾燥機からお湯が出ない」という故障に対し、診断や修理のスピードと正確さを競った。もちろん、選手には故障の内容は知らされていない。

 選手には審査員のベテラン技術者が張り付き、工具の使用状況や手さばきなど一挙手一投足に目を光らせた。審査項目は17。審査員は手にしたチェックシートに成績を記入していった。

 「お客さまへの説明」も大切な“現場力”

 さて、ここまでなら同じような取り組みをしている企業がある。ユニークなのは診断と修理の間に「お客さまへの説明」という“競技”があることだ。

 診断を終えた選手は別室へと走り、顧客役の社員に故障の具合を説明。顧客の隣にはチェックシートを持った審査員が座り、その説明に耳をそばだてる。

 専門用語を使わずに、分かりやすい言葉で説明しているか、顧客の反応を見ながら説明できているかなど、こちらは11項目でチェックする。

 「顧客への説明」を競技に加えたのは、「お客さまサービスを重視するため」とお客さま保安部の馬淵(まぶち)朋紀・機器メンテナンスグループマネジャー。「費用も含め、お客さまにいかに納得してもらえるかは信頼を得るために非常に大切。CS(顧客満足度)は技術と並んで重要な要素に位置づけている」と話す。

 機器販売だけではないガス会社ならではの事業特性上、顧客とのコミュニケーション能力を高めてこそ、初めて事業を“完成”できるという思いがある。これも大切な“現場力”なのだ。

 説明を終えた選手は再び元の部屋に戻り、最終的な修理作業に着手。各コースで最優秀賞、優秀賞が1人づつ選ばれ、表彰状とトロフィーが授与された。

 選手は職場の代表。「恥はかけない」…

 予選を勝ち抜いた選手は、いわば職場の代表でもある。競技会場には上司や同僚が詰めかけて声援を送る。

 「これがこの選手権のもう1つの効果です」と馬淵さん。「職場の代表だけに『恥をかけない』と、上司もいっしょになって腕を磨く。その結果、職場の一体感が高まり、本人だけでなく、回りの社員のモチベーションも高まる」という。

 この選手権は創立90周年を迎えた昨年に初開催し、今年が2回目。それまで部門ごとに似たような取り組みをしていたが、「全社的な活動にすることで、グループや会社全体としての技術とCSの水準を上げることを狙った。同時に技能伝承の重要性について、みんなで考える機会にしようと思った」と話す。

 今年の選手権は2日間にわたって開催され、ガス機器修理や定期保安点検、供給に関する競技など、全6競技に、2100人の中から予選を勝ち抜いた96人が出場した。

 「選手権を通じて互いが切磋琢磨(せっさたくま)し、お客さまの思いや期待に応えるサービスを提供したい」と安井香一(こういち)社長。継続して開催することで、新たな“伝統”を築きあげたい考えだ。(佐久間史信)

◇会社データ◇

本社=名古屋市熱田区桜田町19-18

設立=大正11年6月

事業内容=ガス事業、熱供給事業など

売上高=5183億円(平成25年3月期連結)

従業員数=2821人(同3月末)

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