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「無添加」への思い受け継ぐ シャボン玉石けん社長・森田隼人さん
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せっけん成分だけの無添加せっけんを作り続ける「シャボン玉石けん」(北九州市若松区)。社長の森田隼人さん(37)の父、光●さんが製造に乗り出し、苦労しながら販売を拡大してきた。その姿に、森田さんは物心つく頃から跡を継ぐことを決めていた。
森田さんが生まれる2年前、光●さんは長年続けてきた合成洗剤事業から撤退。香料や着色料、酸化防止剤などを一切含まない無添加せっけんの製造・販売へ切り替えた。「人と地球に優しいものを作りたい」という信念を抱いたためだ。
家では頭や顔、体などを自社の無添加せっけんで洗っていた。「色も、香りも、キャラクターも付いていない、ただの白いせっけん。『変なせっけんだな』と感じていた」というのが子供時代の思い出。ただ、サッパリする使い心地は気に入っていた。
家ではあまり仕事の話をしなかったという光●さんだが、新事業が軌道に乗るまでに長い時間を要した。知名度不足もあり、売り上げは100分の1に激減。その後、17年間も赤字が続いた。
無添加せっけんにかける父の思いを知ったのは中学生の頃だ。当時、光●さんはせっけんの良さを伝えるため、書籍を執筆。下書きしたものを計算用紙として森田さんに渡していた。
そこには「肌にも環境にも優しい製品を多くの人に届けたい」という意気込みがつづられていた。「すごいせっけんを作っているんだ、と誇らしく思いました」
大学卒業後、シャボン玉石けんに入社。光●さんが既に68歳だったこともあり、「少しでも長く父と一緒に働き、多くのものを吸収したい」と考えた。「入社したい」と伝えると、光●さんはひと言、「そうか」。
「良い物を丹念に作ることが大事だ」「製品の良さを丁寧に伝えていこう」。家では見せないような厳しい表情で働いていた光●さんからは何度も製品へのこだわりを聞かされた。利用者からも「子供の肌の状態が良くなった」などと喜びの声が数多く寄せられていた。
30歳で社長に就任。そのわずか半年後、光●さんは志半ばで死去した。今はハンドソープや歯磨き粉、せっけん系泡消火剤など商品の幅を広げつつ、せっけんの持つ可能性を探る研究活動にも力を入れる。
「『健康な体ときれいな水を守る』という理念を守りつつ、無添加せっけんの良さを多くの人に伝えていきたい」(竹岡伸晃)
思いを引き継いで頑張っています。お父さんの目にはどう映っていますか?
【プロフィル】森田光●(もりた・みつのり) 昭和6年、福岡県生まれ。学習院大卒。29年、森田商店(現シャボン玉石けん)に入社し、39年に社長。49年に事業の全てを無添加せっけんの製造・販売に切り替える。平成19年3月、会長就任。同年9月、76歳で死去。著書に『自然流「石けん」読本』(サンマーク文庫)など。
【プロフィル】森田隼人(もりた・はやと) 昭和51年、福岡県生まれ。専修大卒。平成12年、シャボン玉石けんに入社し、副社長などを経て19年から社長。
●=徳の心の上に一