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リヴァンプ、起業100社の夢 経営者を育成 売上高計1兆円目標
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リヴァンプの最近の主な支援、新規事業
企業再生支援会社のリヴァンプ(東京都港区)が矢継ぎ早に新規事業に乗りだしている。同社の社長兼最高経営責任者(CEO)は、カジュアル衣料のユニクロを展開するファーストリテイリングで副社長を務めた沢田貴司氏(56)。有望と判断した分野で収益を上げるとともに、実務経験を通じて優秀な経営者を育てるのが狙いだ。英語で「刷新」を意味する社名をどれだけ体現し、理念に掲げる「日本経済を元気にする」という役割を果たせるのか。創業9年目に入った沢田氏は、ビジネスリーダーとしての力量を改めて問われる局面を迎えている。
「この店から『朝文化』を発信したい。何を食べるかで、朝がすごく元気になれる。そのきっかけづくりを提供したい」
港区の複合施設、六本木ヒルズの一角に5日に開店した卵料理中心の飲食店「エッグセレント」の事業運営を担う神宮司希望(じんぐうじ・のぞみ)さん(28)は、こう意気込む。有機農場で調達した卵を使い、コメを採り入れたオリジナルメニュー「エッグ ベネディクト」などが好評だ。
コンセプトを考えた神宮司さんは、準ミス日本の経歴も持つ全日本空輸の元国際線客室乗務員。世界の店を食べ歩いて感覚を磨き、練り上げた構想を沢田氏に認められ、3月に新会社エッグセレントの取締役最高執行責任者(COO)に就いた。
リヴァンプにとって2013年は新事業ラッシュとなった。エッグセレント以外にも飲食店運営の「クシーナ」、カプセルホテル運営の「ナインアワーズ」、ヘアアクセサリー店運営の「アンジェブルーム」を設立。沢田氏は狙いを「ブランドを立ち上げることで、フランチャイズ化や関連商品の展開などいろいろな可能性が広がる」と話す。
沢田氏のビジネス経験の出発点は伊藤忠商事。セブン-イレブン・ジャパンのプロジェクトに携わり、コンビニエンスストアの成長を予見して伊藤忠での事業化を提案したが認められず、退社した。1997年入社のファーストリテイリングで副社長に翌年抜擢(ばってき)され、製造小売り(SPA)の仕組み作りを支え、急成長を牽引(けんいん)。社長候補になりながらも独立の道を選ぶ。
2003年に企業再生ファンドを立ち上げた後、ファーストリテイリングの社長を務めた玉塚元一氏(現ローソンCOO)とともにリヴァンプを05年に設立した。
再生ファンドは通常、安く買収した経営不振の企業の価値を上げ、より高く売却して投資家に利益を還元し、自らも収益を得るビジネスモデルだ。これに対してリヴァンプは、再建を目指す企業に自ら出資して一定期間だけ経営に参画。支援チームを送り込んで成功報酬を得る。
ファストフードのロッテリアの再生などに成功した一方、東京の老舗靴卸業者の再生に失敗するなど「理想と現実のギャップは大きかった」(沢田氏)。とはいえ、山あり谷ありの経験を積んだリヴァンプにはいま、企業再生の案件が多いときは1日に数件持ち込まれるという。
全国の都道府県に設置された中小企業再生支援協議会が12年度に手掛けた再生計画の策定支援件数は、前年比5.9倍の1511件にのぼる。リヴァンプの担う役割は決して小さくない。
沢田氏は再生事業とともに、自社が手掛ける新事業を収益の両軸に据える。100社の事業会社を作り、各100億円の売上高を目指すという。「100人の社長とともに計1兆円。ライフワークとして取り組みたい」と強い覚悟で先を見つめている。(村山雅弥)