SankeiBiz for mobile

「瀬戸際」アベノミクス下支え 経団連、賃上げ努力の方針明記

ニュースカテゴリ:企業の経営

「瀬戸際」アベノミクス下支え 経団連、賃上げ努力の方針明記

更新

 経団連は22日開いた政労使会議で、賃上げで経済の好循環を実現する決意を明記した文書を提出した。来春闘の方針に反映する。株価の上昇などで足元の経済情勢は明るさを増しているが、中小企業や非正規雇用者など全体への波及はこれからで、来春闘では賃上げの波及をめぐる攻防が必至だ。

 安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」効果で、企業の賃上げ機運は近年になく高まっている。経団連が11月上旬にまとめた大手企業の冬のボーナスの第1次集計は前年同期比5.79%増の82万2121円と高い伸びだった。中小企業も、東京商工会議所が実施した東京23区内の賃金動向調査で、今年4~7月に前年同期より賃金総額を増やした中小企業は35.3%に達した。

 2012年3月末に281兆7000億円だった企業の内部留保も円安株高の進展で増加傾向にあるとみられる。今春に安倍首相が賃上げを要請したときには「可能な企業から」と慎重姿勢を崩さなかった経団連が賃上げ方針を書面に明記したのは、経営環境の好転が一因だ。

 安倍政権を下支えする意味合いもある。経済の好転を背景に高支持率を誇る安倍政権は一見順風満帆だが、13年の経済成長率は1~3月期の4.1%から4~6月期の3.8%、7~9月期の1.9%と下降気味。

 税制改正や成長戦略の関連法案が成立するのはこれからで、実効をあげるにはなお時間がかかる。

 円安株高で内需を刺激し輸出増や投資を促すことで、賃金や賞与の配分が増すという好循環によりデフレから脱却するという政府のシナリオは「瀬戸際に立っている」(長谷川閑史経済同友会代表幹事)というのが財界の認識だ。

 経団連の宮原耕治経営労働政策委員長は「本当は明記したくない。だが賃上げ努力を明記しないと安倍政権がもたない」と本音をもらす。

 連合の古賀伸明会長は20日の経済同友会との意見交換で「非正規労働者が2000万人を超え、年収200万円以下の層は1100万人にのぼる。最低賃金ぎりぎりの非正規雇用者もいる」と賃上げを訴えた。神津里季生事務局長も「大企業が賃上げをリードするだけで問題は解決しない。非正規や中小企業の底上げが伴って初めて好循環につながる」と強調した。

 来春闘では中小企業や非正規まで賃上げが広がるかが焦点になりそうだ。(早坂礼子)

ランキング