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サントリーが巨額買収 食品業界、M&Aで生き残りに活路
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サントリーHDが巨額買収を仕掛けた食品業界では、海外を舞台としたM&A(企業の合併・買収)の動きが加速している。世界市場全体では巨大企業による寡占化の流れが顕在化しており、生き残りをかけた陣取り合戦が激しさを増している。
「これまで数千億円の買収案件はあったが、一段ギアを上げてきた」。野村証券の藤原悟史アナリストは、サントリーHDによる今回の買収劇を、業界全体の海外シフトに向けた一里塚ととらえる。
農林水産省によると、食品の国内市場は、2009年時点の58兆円から20年には67兆円と約1.2倍の拡大を見込む。だが、少子高齢化による人口減少で、長期的には市場縮小は不可避。一方、同期間の海外市場は、340兆円から680兆円と倍増の見通しで、アジアは3倍の成長率と試算される。
こうした状況下、食品各社は海外でのM&Aを活発化させる。アサヒグループHDが11年、ニュージーランド(NZ)の酒類大手インディペンデント・リカー・グループを約976億円で買収したほか、飲料以外でも、日清製粉グループが昨年2月に豪州の食品大手グッドマン・フィールダーのNZ事業を約33億円、味の素も先月、トルコの調味料メーカー、キュクレを約29億円で買収した。
企業がM&Aに追い立てられる背景としては「海外市場の寡占化も無視できない」(民間調査会社)。市場縮小は先進国共通の課題で各国の有力メーカーが新天地を求め、海外事業比率を高めている。スイスのネスレなど、収益の過半が海外事業という企業も少なくなく、アジアなどの成長市場は草刈り場の様相を呈している。(佐久間修志)