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働く女性に「優しいオフィス」 不動産大手、ニーズ捉え開発注力
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労働力人口に占める女性割合 大手不動産各社が都心のオフィスビル開発で、ワーキングマザーら働く女性のニーズを反映させる動きが広がっている。雇用者に占める女性の割合が増加傾向なのに加え、政府が女性活用を成長戦略の柱に据えたことで、今後は出産後も働く女性の数が増える見込みだ。企業テナント誘致で「女性に優しいオフィス」を付加価値に競争力を高める狙いがある。
1月下旬の平日ランチタイム、東京都港区の六本木ヒルズの一角に、周辺のオフィスに勤める働く母親たちが集まった。昼食をとったり簡単なお菓子作りをしたりしながら、リフレッシュと情報交換に盛り上がる。子供がいると「夜の会合に出づらいのでこういう場はうれしい」と、出席者には好評だ。
主催の森ビルには、働く母親のニーズを知りたいという目的がある。同社がテナント企業の女性社員に調査すると、育児と仕事の両立を理想とする人が9割近い。
「この層に快適な環境を提供することが、10年後に選ばれるオフィスになる」。
オフィス事業部の宮地紋子さんは、そう見据える。森ビルは昨年5月に「女性が働きやすいオフィス環境」をテーマに専門チームを発足。社内外の働く母親を対象に、こうしたイベントやヒアリングを積極的に行っている。
その結果「昼休みにスーパーで食材の調達をしたい」「学童保育があるといい」「週末の子供向けイベント情報がほしい」などのニーズが浮き彫りになった。
「男性中心のオフィスビルにはなかった、より生活感のある需要が見えてきた」と、同社広報室の深野有紀さんは指摘する。今後も専門チームで女性のニーズを吸い上げ、オフィスビル開発に生かしていくという。
「感度の高い女性にとって快適なビルは男性も快適」。そう話すのは、東急不動産事業企画グループの仲神志保さんだ。2012年12月に完成した新目黒東急ビルでは、女性が働きやすいオフィスを意識し光、緑、風を取り入れる設計にした。従来の「男性ばかりのオフィスビル」にはなかった発想という。
女子トイレに化粧用スペースやライトを設けたり、授乳中の女性も使える休憩室も設置した。「居住空間のようなオフィス」を意識してシャワー室や自転車置き場も備え、テナント企業の男性からの評判も高いという。
東京都の事業所内保育施設設置で先行する三菱地所も、働く女性に向けたオフィスビル開発に力を入れている。
東京・丸の内や大手町のビルに婦人科系のクリニックやフィットネスジムを誘致。通勤時間や昼休みにも通えることで、利便性を高めた。丸の内のジムは女性比率が高いといい、働く女性の需要をしっかりつかんでいる。
さらに三菱地所は大手町、丸の内、有楽町エリアのまちづくりを目的とする特定非営利活動法人(NPO法人)の事務局も担当。
「働くママのコミュニティー支援」として、ランチタイムに子育てセミナーを開催するなど、親同士で情報交換のできる場を提供している。
1990年代半ば以降、共働き世帯の数は専業主婦世帯を上回り続けている。今後、産後も働き続ける女性や、男女問わず育児や介護をしながら働く人が増えるのは明らか。
オフィスのあり方も「仕事だけをする場所」から、仕事と生活を両立させる人のための場へと変遷を遂げるのかもしれない。(滝川麻衣子)