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ゼネコン、海外進出を再強化 東京五輪後の国内市場縮小見据え
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大手ゼネコン5社の海外受注高 2020年東京五輪以降の国内建設市場の縮小を見据え、大手ゼネコンが海外進出を再び強化している。竹中工務店を除く大手4社の13年度の海外受注高(見通し)は前年度比17.0%増の8150億円に達した。ゼネコン各社は過去の苦い経験を糧にし、社内組織再編や現地企業との融合などに乗り出している。
マレーシアの首都クアラルンプール近郊にある山間の地表面から約800メートル直下のトンネル工事現場。直径約5メートルの円筒形掘削機「TBM」がけたたましい音で硬い岩盤を突き破り、総延長約44.6キロの東南アジア最長のトンネルがつながった。
19日、清水建設と西松建設、地元企業のJV(共同企業体)が建設を進めていた導水トンネルの貫通式典。JVの河田孝志建設所長(清水建設)は「培った技術が役に立てた」と笑顔を見せた。大量の湧水や55度を超える岩盤温度による厳しい作業環境などに見舞われながら、日本のゼネコンのリスク対応力を海外に示した瞬間だった。
ゼネコン各社は、09年秋にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国で金融不安が表面化した「ドバイショック」の直撃により、海外工事の採算が悪化。この経験から、新興国の政情悪化などに伴う海外リスクをどう回避するかが課題となっていた。
清水は13年1月、海外プロジェクトの契約リスク管理に特化した組織をシンガポールの国際支店に設置。国際支店には、非日系顧客の発注案件を専門に扱う設計組織もあり、同社の高野博専務執行役員は「入札機会を増やすという意味で武器になっている」と手応えを話す。
大成建設は、ボスポラス海峡の地下鉄工事や、カタールの空港工事でJVを組んだトルコの建設会社との連携を深化させる。トルコの建設会社は地理的に近い中東や北アフリカで堅固なネットワークがあり、単独で進出するよりリスクが少ない。「海外に出るときは地場会社と組んでやるのは基本だ」(同社の尾形悟副社長)と説明する。
大林組は、インフラ需要の旺盛な東南アジアだけに注力せず、北米、中東を含めた3拠点に経営資源を分散する。価格競争では人件費が相対的に安い中国、韓国の建設会社が有利だが、大林はシンガポールにおける建築工事入札を分析し、「技術力や提案力が評価されて日本のゼネコンが落札しているケースもある」と指摘。3次元の建物モデルを活用し、設計や施工管理、維持管理までの過程や完成した姿をイメージできる技術「BIM」を積極展開し、昨年9月にはシンガポールの大型都市再開発事業受注につなげた。
一方、鹿島は米国での事業で買収した地元企業3社が好業績を牽引(けんいん)する。建設業が成熟産業となっている国では、下請けや地域との関係をゼロから構築することは現実的ではないという考えだ。竹中工務店は、1月にシンガポール・チャンギ国際空港ターミナルの新築工事を受注。国内外で多くの空港建築を受注している強みを生かす。
東京五輪のインフラ整備や東日本大震災の復興需要が一巡すれば、国内市場は縮小に戻るのは確実だ。それまでに海外事業の“独り立ち”が避けられない。「ドバイ」の傷が癒え、海外に再挑戦するゼネコンの人材育成やリスク回避の現場を追った。(鈴木正行)