ニュースカテゴリ:企業
メーカー
グリコのポッキー世界戦略 「赤ヘル部隊」「ポッキーワゴン」投入
更新
量販店に向け出発するグリコの「赤ヘル部隊」。そろいのユニフォームやヘルメットは、日本発のアイディアだ=2月11日、インドネシア・ジャカルタ市 江崎グリコ(大阪市)がチョコレート菓子「ポッキー」の“世界ブランド”化を目指し、インドネシアでの事業展開を強化する。現在世界約30カ国で販売されている「ポッキー」は、昨年の売上高が前年比3割増の約400億円だが、2020年に約2・5倍の10億ドル(約1千億円)にまで引き上げるのが目標だ。
人口2億4千万人で世界4位のインドネシアは、世界の菓子メーカーが近年注力する有望市場。グリコは「赤ヘル部隊」や「ポッキーワゴン」など、独自のアプローチを展開で世界を目指す。
午前8時半過ぎ。インドネシア・ジャカルタ市中央部にあるグリコの販売代理店に、「Pocky」のロゴが入った赤いポロシャツ姿の男女が続々と集まり、会議が始まった。赤いポロシャツの男女は、グリコがインドネシア国内12カ所に構える販売代理店の従業員。ポッキーの営業担当だ。
議題は、担当店舗の売り上げや課題についての情報共有。約1時間後、従業員たちは「Pocky」ロゴ入りの赤いヘルメットを被ると、オートバイに乗って次々と出発した。
目的地は、「モダントレード」と呼ばれるスーパーなどの量販店。販路拡大のほか、契約した商品陳列棚にきちんと商品が並んでいるかを確認したり、店舗の注文を受けたりするのが仕事だ。
「商品を並べる棚(枠)を買い取っても、注文が来ない。こんなことはしょっちゅうです」
販売代理店の営業マネジャー、ルーシー・アンドリアニさん(41)はこう話す。競争が激化しているインドネシアでは、他社が勝手にグリコの商品陳列棚の商品を、自社商品に並べ替えてしまうことも日常茶飯事。契約しても店主が商品を棚に並べてくれないこともある。「ポッキー」販売には、こまめで地に足の付いた営業活動が不可欠なのだ。
グリコのインドネシア進出は40年前。タイ工場で生産した菓子を輸入し、販売代理店を通じて販売してきた。日本由来のアイドルグループ「JKT48」を起用したテレビCMなどでブランドの認知度やイメージアップを推進。順調に販売拡大を進めていた。
だが、2011年のタイ洪水の影響で、タイでの生産は停止。輸入再開には1年の時間を要し、一時インドネシアでの販売はゼロになった。グリコはここでインドネシア駐在を置くことを決め、タイ現地法人の駐在員事務所長だった田崎圭さん(41)が、昨年1月に着任。今年3月に設立されたインドネシアの販売会社で、取締役マーケティング本部長に就いた。
田崎さんが進めてきたのは代理店との情報共有、業務効率化など。「赤ヘル部隊」の共通ユニホームも、「『私たちのブランドだ』という誇りを持ってほしかった」という田崎さんのアイデアだ。
米菓子大手の「オレオ」など、グローバルブランドにはまだかなわない「ポッキー」の販路拡大は、地道な戦略に支えられている。グリコ商品の売り上げが良い店の表彰を定期的に実施、「売りたい」モチベーションアップを図っている。“棚戦争”も有利に運ぼうというのがねらいだ。
少子高齢化、人口減少で日本国内の菓子市場が先細りする見通しの一方、インドネシア市場は明るい。富士経済の調べでは、インドネシアの菓子市場は2012年は2473億円だったが、中間所得層の拡大で今年は2963億円にまで拡大する見込みだ。
しかも伝統的に「お菓子好き」な国民性というインドネシアは、総人口の約56%が30歳未満。若年層が多いということは、菓子市場の伸びが期待できる市場ということだ。
近年、世界各国の菓子メーカーはインドネシアに注力している。森永製菓も生産拠点を設置し、来年からソフトキャンディー「ハイチュウ」を世界戦略商品として製造販売する予定。ロッテも来月から現地生産でソフトケーキ「チョコパイ」などを売り出す計画だ。
インドネシアが注目されるのは、同じく成長する東南アジアへの輸出が見込めるのに加え、人口の大半がムスリムであることから、中東、アフリカにまで広がる「イスラム市場」への輸出につながる可能性があることが背景にある。
イスラム教徒の人口は世界の2割の16億~18億人とされ、市場規模は日本円で50兆円との試算も。グリコもこれをにらみ、昨年3月にタイ現地法人で「イスラム法的に許されたもの」を意味する「ハラル」認証を取得した。
インドネシアでのポッキーのターゲット層は、「10代の若者」(田崎さん)。だが、150グラムで7400ルピア(74円)のポッキーは、現地では高価な部類に入り、中間所得層の子供が少し“背伸び”をしないと買えない商品だ。「トラディショナルトレード」と呼ばれる駄菓子屋では売られていない。
そこで、子供たちの間での知名度アップを図ろうと、グリコは12年11月から、「ポッキーワゴン」と銘打った真っ赤なワゴン車で全国の中学校、高校を巡回。ポッキーを無料配布するキャンペーンをはじめた。学校で配ることで、ブランドイメージに「安心感」も付け加えるのもねらいだ。
都市部の学生の間では、休日や放課後に量販店でのショッピングを楽しむ「ハングアウト」と呼ばれる習慣が広がっている。手を汚さず手軽に食べられる「ポッキー」は、このハングアウトの「お供」の地位獲得もねらっている。
インドネシアでの2015年の売上高目標は、13年比2倍の10億円。世界ブランド化に向け、グリコの本格展開が始まる。(織田淳嗣)