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正念場…日産ゴーンCEOの挑戦心 緒戦つまづき…計画実現いばらの道
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日産自動車のカルロス・ゴーンCEO
2年連続で業績下方修正を実施した日産自動車の業績面での出遅れ、および同社の中期経営計画「日産パワー88」の不発ぶりは再三メディアでも取り上げられてきた。2016年度までに世界シェア8%、営業利益率8%を目指すが、今年度会社計画は、世界シェア6.7%、営業利益率5.7%にとどまり、実現はいばらの道だ。緒戦のつまずきは多くの原因が指摘されるが、マネジメント力が旺盛な事業拡大に追随できなかったことは否定しがたい。
特に、米国事業のつまずきは、ゴーンCEO(最高経営責任者)自身が「人災」と振り返る。生産管理から収益管理に至るまで、12年から問題が途切れることがなかった。安定しない経営メンバー、猫の目のように変わる経営方針に生産現場もディーラーも混乱をきたしたと聞く。人災と言っても、その任命責任は最高責任者のゴーンCEOにあることは明白だ。
近年のゴーン氏のメディア評価はいまひとつ。フランスと日本の上場企業であるルノーと日産のCEOを兼務することは、物理的な制約以上に、企業とガバナンスの観点からも容易なことではない。結果を出せなければ容赦なく非難され、持続させることは困難だ。まさに、今年は正念場である。
危機に際し、ゴーンCEOは大胆な人心刷新と組織変更を打ち出した。日産のグローバルな事業地域を3地域から6地域に細分化。COO(最高執行責任者)の機能を3人の副社長へに分割した。
細部にわたり正確な情報を収集し、精度高い経営判断を打ち出すためだ。同時に、ルノーと日産の研究・開発、生産技術・物流、購買、人事という会社の主要4機能を統合し、会社組織は別でも、意思決定を統一する仕組みを導入した。
世界でもまれな成功例とうたわれるルノー・日産のアライアンスも、実際の現場は不協和音が響く。それほど、複雑な技術が集大成する自動車産業の合従連衡は容易ではないのだ。
この両社を無理やり統合しても、過去のダイムラー・クライスラーのように空中分解のリスクがある。進むべき道はアライアンス成果を一段と高い次元で生み出し、競争力を高め、持続可能な経営体制を模索するするしかない。ゴーン氏のこのアライアンスにかける執念はすさまじいものだ。
ゴーン氏のチャレンジ・スピリッツ(挑戦心)は敬服に値する。しかし、この機能統合の難易度は非常に高いように映り、挑戦心の結実は自動車産業史に残る出来事となりえよう。
これまでも、ゴーンCEOが生み出した日本の経営システムへの影響は計り知れない。今や日本的経営でも当たり前のコミットメントやインセンティブ経営は多くはゴーン改革がもたらした変化であった。
1999年の電撃的なルノー・日産の合従連衡に対し、市場は「弱者連合」などと懐疑的な見方を投げつけたものだ。現在の成功を思えば、両社のCEOとなったゴーン氏の卓越した経営力は言うまでもなく、時代が求める変化への果敢な挑戦心があったことを忘れてはいけない。(自動車アナリスト 中西孝樹)