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マンション節電市場、参入相次ぐ 「一括受電」電力自由化後2倍に
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電力会社からマンション全体で電気を一括購入して料金負担を軽減する「高圧一括受電サービス(一括受電)」市場が勢いづいている。消費者の節電意識の高まりで急速に認知度が向上、2016年をめどに予定される電力の小売り全面自由化後には市場規模が現状の約2倍に拡大すると見込まれるからだ。ただ、電力自由化後の競争激化は必至の情勢で、一括受電の参入各社は消費者に選ばれるサービスの拡充を急いでいる。
各社が市場拡大に期待を寄せるのは、マンション内の電力消費量などを「見える化」し需要のピークを抑制・制御する機能をもつ「スマートマンション」が普及してきたためだ。
5月中旬、NTTファシリティーズのスマートエネルギー推進部では、毎日のように社内で会議が続いた。楽天などと組んだ新しい節電サービスの詳細を詰めていたからだ。
店舗に行くだけでポイントがたまる楽天のサービス「楽天チェック」と連携し、平日の昼など電力需要が増える時間帯に店舗に行くとポイントがより多くたまるようにする。ピーク時の電力消費量抑制が狙いで、7月から始める。NTTファシリティーズの安達博・マンション電力供給担当部長は「電力自由化に向け、さまざまなサービスを検討している」と意気込む。
一括受電をめぐっては、原発再稼働が進まずに電力会社が電気料金の値上げに相次いで踏み切ったことなどを契機に消費者の関心が高まった。経済産業省の「スマートマンション導入加速化推進事業」(総額130億円)では、一括受電の設備導入に補助金を出し、市場拡大を後押しする。
富士キメラ総研によると、14年度の一括受電の市場規模予測は新築、既築を合わせて前年度比32.2%増の398億円。電力自由化後の17年度は772億円まで膨らむ。
そこで各社は一括受電と、スマートメーター(次世代電力量計)などの計測器、IT(情報技術)を組み合わせたサービス強化に乗り出した。
オリックス電力は、スマートマンション導入加速化推進事業の交付申請数(941棟、14年3月末時点)のうち、約420棟を占める。同社は4月下旬、新たにインターホンを活用するサービスを始めた。
長谷工コーポレーション傘下の長谷工アネシスは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のスマートメーターを採用、一括受電に参入して2年余りで約6万戸に導入した。アネシスの松崎篤志常務執行役員は「(一括受電は)11年3月の東日本大震災前までニッチなビジネスだったが、震災後は有望ビジネスになった」と話す。今後はスマートメーターのデータを活用し高齢者などの見守りサービスなどを検討する。
一括受電と太陽光発電システムを併用するサービスも商機となる。三菱地所レジデンスは、首都圏と関西圏に限定していた併用サービス「ソレッコ」を4月から中部圏でも始めた。同社に一括受電を提供する中央電力の平野泰敏副社長は「大手の採用により、営業面で大きなインパクトがあった」と話す。業界トップの10万4000戸の導入実績もあり全国展開をもくろむ。
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オリックス電力が新築マンションで導入した併用サービスでは、電気料金を最大20~30%削減できたという。「最近では新築の7~8割で一括受電を検討している」(関係者)といい、各社とも付加価値の高いサービスでしのぎを削る。
電力小売りが全面自由化されれば、工場やオフィスビルなどに販売先が限定されていた特定規模電気事業者(新電力)が、マンション向けも営業を始める。商社や石油、不動産など異業種からも一括受電への参入が相次いでおり、価格競争や他の生活サービスとのセット販売など競争が広がりそうだ。ある大手の一括受電業者は「新規参入業者にとっては2万戸が損益分岐点。今後それに満たない業者は淘汰(とうた)される」との見方を示す。
一括受電業界では、大手電力会社頼みを見直し、安価な電力の調達に向けた模索も始まっている。
中央電力では、グループの新電力「中央電力エナジー」が4月から営業を始めた。中央電力の平野副社長は「自由化後の電力を安く買える仕組みを構築したい」と狙いを明かす。
また、オリックスは3月までに、214件(最大出力42万5100キロワット)の太陽光発電事業の開発に着手した。このうち、67件(同6万6700キロワット)で発電を始めた。地熱、風力など再生可能エネルギーによる発電事業や一括受電、蓄電池レンタルサービスなどグループのエネルギー事業全体で相乗効果を模索する。
ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(JCOM)は昨年9月、一括受電大手のアイピー・パワーシステムズを子会社化した。放送・通信サービスに加え、割安な電力の提供に取り組む戦略だ。JCOMは「一括受電のノウハウをため、電力自由化後の集合住宅向け事業をどう展開するか考えている」と話す。新しいビジネスモデルづくりにかける時間は限られており、各社が正念場を迎えるのはこれからだ。(鈴木正行)