ニュースカテゴリ:企業
メーカー
電力各社、原発維持なるか コスト回収困難、原賠法も重荷
更新
九州電力の川内原発1号機(左)と2号機。再稼働に向け、原子力規制委員会の安全審査を受けている=鹿児島県薩摩川内市 電力小売りを全面自由化する改正電気事業法が11日、成立したことで、電力各社は建設や安全対策に巨額の投資を必要とする原発を維持できるかという課題に直面することになる。自由化に伴う競争で電気料金の引き下げが求められる中、原発にかかる費用を従来のように料金で回収するのが難しくなるためだ。原発事故が起きた際の責任を事業者が無限に負うと定めた原子力損害賠償法(原賠法)も大きな重荷となっており、電力各社は国との責任分担を明確化することを求めている。
「国策民営の新たな在り方を検討し、原子力事業が長期に安定的に運営されるよう、事業環境を整備することが不可欠だ」。電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は11日、改正電気事業法の成立を受けてコメントを発表し、自由化後に原発事業を支える施策を政府に要望した。
100万キロワット級の原発1基の建設費は、出力が同規模の液化天然ガス(LNG)火力発電所に比べて3倍の約3000億円とされ、安全対策にも多額のコストがかかる。これらの費用は人件費や燃料費などとともに「総括原価方式」で電気料金に算入されてきたが、この仕組みは自由化後、経過措置期間を経て廃止される見通しだ。
自由化後の原発関連の施策をめぐり、政府が4月に閣議決定したエネルギー基本計画では「海外の事例も参考にしつつ、事業環境の在り方について検討を行う」としている。
いち早く自由化が進む英国や米国では、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない原発を再生可能エネルギーと同様に長期固定価格買い取り制度の対象としたり、新設する原発に政府が債務保証を行うなどの施策を導入。自由化と原発維持の両立に腐心している。21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹は「原発を活用するなら、新増設する際の市場補完的な支援策の検討が欠かせない」と指摘する。
また、原発事故が起きた際に背負い込む責任も電力会社の大きな経営リスクとなっている。原賠法は、電力会社など原発事業者は過失がなくても事故の責任を無限に負い、政府は必要なときに支援すると規定。電力業界は「厳しすぎる」(八木氏)と強く反発しており、政府は同法の見直しに向けて関係省庁の副大臣らによる会議を近く立ち上げる予定だ。
エネルギー基本計画では原発を「重要なベースロード電源」と位置づける一方、「原発依存を可能な限り低減する」とし、政府は電源構成比率の明示を見送った。自由化を控え、あいまいな原発政策は許されず、政府の姿勢が問われることになる。