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キーコーヒー、インドネシアで新型カフェ 豆の産地に初の直営店
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キーコーヒーの直営カフェ「トアルコトラジャコーヒーショップ」と、トアルコ・ジャヤの中野正崇副社長=8日、インドネシア・マカッサル コーヒー卸大手のキーコーヒーが同社初の本格的な直営カフェをオープンした。場所は、同社が約40年前から開拓を進めるコーヒー農園があるインドネシア・スラウェシ島。高級品として知られる同農園産の豆を店内で焙煎(ばいせん)し、スイーツや食事も提供する。世界のカフェ業界では豆の産地やコーヒーのいれ方にこだわるサードウエーブ(第3の波)が台頭。同社も自社農園の豆を中心に新たなカフェ文化を広く発信したい考えだ。同国内や他国へのカフェ展開も視野に入れる。
「パダマラン・コーヒーを一つ、日本風ケーキを一つ…」
8日にスラウェシ島最大の都市マカッサルにオープンした「トアルコ トラジャ コーヒーショップ」。初日の招待客らでごった返す店内で、注文したメニューをインドネシア語で丁寧に繰り返すウエートレスは、目を合わせるとにこやかにほほ笑んだ。
「この3週間は毎朝1時間、ミーティングを繰り返した」と同店の共同オーナーでキーコーヒーと現地企業との合弁会社トアルコ・ジャヤ(ジャカルタ)の中野正崇副社長。カフェオープンに際し、40人近い現地の若者を採用。メニューとともに、サービスも日本と同等以上の高品質を求め、教育を徹底した。
中野氏は2012年末に赴任。現地法人は、同島中部トラジャの山岳地帯で手がける「パダマラン農場」と、その周辺農園から仕入れる高級コーヒー豆「トアルコ トラジャ」を、主に日本に輸出していた。
人口約300万人のマカッサルは、経済成長率で首都ジャカルタを上回る。街中に現地資本のカフェがあるほか、米スターバックスなど大手チェーンも出店を進める。だが、同島最大の生産者であるトアルコ・ジャヤのコーヒー豆は「ほとんど国内に流通しておらず愕然(がくぜん)とした」(中野氏)。
中野氏が考えたのは、それまでなかったインドネシア国内向けの営業拠点と直営カフェの設置だ。それから約1年半、今年4月、マカッサルに国内の流通業者やカフェオーナー向け営業拠点を開設。そして今回の直営カフェ開店にこぎつけた。
もともと勝算はあった。営業拠点では、トアルコ トラジャを使い、日本式の丁寧な手で湯を差し入れるハンドドリップ方式でのコーヒーの入れ方などを教えているが、「たいていの人がおいしいと言ってくれる」(中野氏)。すでに13年に国内販売量を前年比20%増に伸ばしたが、拠点を設置した今年5月以降の売り上げは「前年同月比で2倍の伸び」を記録。まだわずかな量だが「手応えを感じている」。
直営カフェは100席以上ある広々した店内。店頭のガラス張りの部屋に焙煎機を設置し、農場から運んできた豆をその場で煎り、ハンドドリップで提供する。コーヒーにミルクの泡で絵を描くラテアートも日本の専門家が現地スタッフに徹底的に指導した。
日本風に甘さを抑えたケーキやパスタは、キーコーヒー傘下のイタリア料理店「イタリアントマト」、その他スイーツはやはり傘下のカフェ「アマンド」からそれぞれ指導者を呼んだ。「すごくおいしい。人気が出るはずだ」と現地スタッフのシェフは自信満々だ。「グループの総力を結集し、すべて詰め込んだ」と中野氏。周辺のカフェに比べ価格も若干安めに設定。開業後の客入りは想定を大幅に超える繁盛ぶりという。
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「インドネシア中のバリスタ(コーヒーに関する技術者)を集めて大会を開きたい」と中野氏は、今回の直営店を“バリスタの聖地”にすることを目指す。ただ「投資も2年で回収する」と採算性にも目を配る。
当面は、トアルコ トラジャのブランド啓蒙(けいもう)型店舗として1店舗の運営に集中する方針。一方で、現地法人に出資するパートナー企業のフランス・ホンガ・ハリム社長は「国内の他の都市や海外にも出店したい」と意気込む。
キーコーヒーの柴田裕社長は今回の直営店で「インドネシアで新たなコーヒー文化を浸透させたい」と話す。その上で「当社の誇るトアルコ トラジャの品質とおいしさ、ブランドを世界に発信していきたい」とも語る。
折しも、米国で広がり、日本進出も見込まれる米ブルーボトルコーヒーを筆頭に、世界ではコーヒーの産地やいれ方に徹底的にこだわるサードウエーブが広がりをみせている。トアルコ トラジャ コーヒーショップはこうした流れに合致。今後、波に乗って店舗を増やしていく可能性もありそうだ。(池誠二郎)