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スターバックス「超強気」は危険な賭け? リストラで「限界論」払拭

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スターバックス「超強気」は危険な賭け? リストラで「限界論」払拭

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スターバックスのロゴ  【アメリカを読む】

 「スターバックスはかつてないほどに猛烈なスピードで文字通り驀進(ばくしん)している。だがあえて言わせてもらいたい。それでもまだスタートに過ぎないのだ」

 好業績のうちに終了した7~9月期の決算発表を10月30日に行ったスターバックス。会見した最高経営責任者(CEO)のハワード・シュルツ氏(60)からは、「超強気」ともとれる発言が飛び出した。

 お茶専門店もオープン

 今や押しも押されもしない米国を代表するコーヒーチェーン大手となったスターバックスだが、立ち止まることなく事業の拡大戦略を加速している。喫茶店のイメージから「進化」し、ファストフード店も意識した食事メニューの充実ぶりに加え、米本国では紅茶やフレッシュジュースの販売を強化。アジアや中南米など新興国市場にも出店攻勢をかけている。

 スターバックスは昨年、人気ベーカリーの米ラブランジェを買収した。ラブランジェの拠点のカリフォルニア州サンフランシスコでパン販売を試験的に始め、米全土に広げる方針で、アナリストは「ダンキン・ドーナツなどに対する競争力がつく」と指摘する。

 8月には傘下のジュースメーカーのエボリューション・フレッシュが、有機食品主体のスーパー大手ホールフーズを通じて非加熱フレッシュジュースの販売を始めた。年末までにスターバックス店舗など全米約8000カ所で販売を見込む。

 早くから紅茶も取りそろえていたが、10月にはハーブティーなど好みのお茶をその場で楽しめる専門店をニューヨークでオープン。買収した茶葉専門店「ティーバナ」が運営し、来年以降は海外にも展開する。

 数年前には「限界論」

 こうした多角化路線は、スターバックスの常連客だけでなく、新たなファン層も開拓しつつある。

 首都ワシントンのホワイトハウス近くの目抜き通り。スターバックスで昼食代わりのサンドイッチと紅茶を同僚と楽しんでいたケイティー・バリルさん(31)もその一人だ。コーヒーは苦手というバリルさんだが、「店の雰囲気が気に入っているし、軽食メニューも増えた」のでよく利用するという。

 2万店近い店舗のうち、1万1000を占める米国が依然業績を牽引(けんいん)するが、海外出店も加速中。17年前に北米以外で初めて進出した日本では今年9月に1000店に到達した。中国も現在の約1000店から2015年までに1500店に増やし、マレーシアなど東南アジアも拡充。来年にはコーヒー豆の供給元のコロンビアにも進出し5年間で50店舗を展開する計画だ。

 猛進する機関車の先頭に立つのは他ならぬトップのシュルツ氏だ。業容を拡大してきたスターバックスも数年前には成長の足がとまり、「限界論」がささやかれたことがあった。

 経営の最前線からは退いていたシュルツ氏はCEOに復帰し、再建に乗り出した。数千もの店舗を一時的に閉めるリストラを進め、水準が低下していた従業員の教育からやり直した。

 急ピッチに危ぶむ声

 カリスマの再登板で業績は徐々に持ち直した。7~9月期は最終利益が前年同期比34%増で、既存店売上高も7%増と高い伸びを示した。シュルツ氏の地道ともいえる改革ぶりに、当初は冷たい反応をみせていた投資家や市場も、「スターバックスの復活は本当だ」(米大手証券関係者)と認めざるを得なくなった。株価も10月に最高値を更新するなど勢いがある。

 それでも、シュルツ氏は「飲み物や食事メニューの見直しでまだ伸びる」と満足した様子はない。

 ただ、急ピッチとも映る海外展開を危ぶむ声は少なくない。中国では、「コーヒー価格が高く暴利をむさぼっている」と中国メディアが相次いで非難する騒ぎが拡大。

 メニューの拡大についても厨房などの莫大な設備投資が必要とみられ、コーヒーショップのスターバックスが次第に「レストラン」化していくことに、米誌タイムは「危険な賭けでもある」と指摘する。

 「スターバックスのブランドを高める努力を続ける」というシュルツ氏のかじ取りに注目していきたい。(ワシントン支局 柿内公輔/SANKEI EXPRESS

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