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伊で「グーグル税」法案提出 ネット企業の納税逃れ対策、EU内で拡大か
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イタリア・首都ローマ イタリア最大与党の民主党(PD、中道左派)は11月4日、グーグルやヤフー、アマゾンといった米に拠点を置く多国籍ネット企業による露骨な納税回避を防ぐため、「グーグル税」と呼ばれる新たな法案を提出した。「税」とは言うものの、こうした多国籍企業に直接課税するわけではなく、イタリアの企業を利用した広告やネット通販を義務付けることで国内の税収を増やすのが狙いだ。イタリアではこの新法によって約10億ユーロ(約1330億円)の税収増を見込んでいるという。
「われわれは、燃料やたばこ、そして小規模の小売業者への増税によって歳入拡大を図るべきではない。そして同時に、われわれがネットを使って買い物をすることで、イタリア経済の発展に興味のない企業の利益が増えている」
法案づくりに携わったフランチェスコ・ボッチャ下院予算委員長(45)は自身の公式サイトでこう明言し、米の多国籍ネット企業が、イタリア国内でもうけながら、納税は税率が安い海外で行っている現状は容認できないとの考えを示した。
ロイター通信などによると、米の多国籍ネット企業は、同じEU内でも、ルクセンブルクやアイルランドといった低税率国の広告会社などを活用し、毎年、数百万ドル(数億円)規模の納税を逃れているという。
法案を提出した当事者であるPDのトップ、グリエルモ・エピファーニ書記長(63)はイタリアの最有力日刊紙ラ・スタンパに対し「『グーグル税』と呼ばれる法案には大賛成だ」と強い口調で答えた。来年設立が予定されている年金生活者や労働者のための基金約25億ユーロ(約3300億円)の資金源にもなり得るとの見通しも示した。
「グーグル税」法案は、エンリコ・レッタ首相(47)率いる連立政権の一角で、シルビオ・ベルルスコーニ元首相(77)率いる自由国民党(PDL、中道右派)の支持を獲得すれば成立する見通しだが、批評家などは、思い付きで出されたような内容の法案で、施行は困難と反対している。
イタリアのオンライン雑誌「ウェブニュース」の編集者で、ネット事情に詳しいジャコモ・ドッタ氏は「確固たる考えに基づいた真の提案というより(多国籍ネット企業への課税という)フロイト的潜在意識下の欲望にすぎない」と批判した。
「グーグル税」法案の提出に関し、グーグル、ヤフー、アマゾンの各イタリア法人はコメントを控えているが、EU加盟各国では、こうした米の多国籍ネット企業の当地でのビジネス拡大と、EU内での低税率国を活用した露骨な租税回避策への批判の声が高まっている。
ネット企業ではないが、昨年10月、米コーヒーチェーン大手、スターバックスが1998年の英国進出以来、課税対象となる利益が発生した年はたった1年で、支払った法人税もわずか860万ポンド(約13億5000万円)だったことが分かり、非難の嵐が巻き起こった。
こうした状況に最も怒っているフランスは既に2010年から、イタリアと同趣旨の「グーグル税」の導入の検討に入っているほか、街の本屋を守るため、10月3日、議会下院がアマゾンなどに対し、書籍を割引販売し、無料配達するサービスを禁止する法案を全会一致で可決した。今回のイタリアやフランスの動きは今後、EU内で拡大する可能性が高い。(SANKEI EXPRESS)