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富士山頂からドコモのVoLTE(上)ビデオコールでクリアな絶景…スマホ越しの高揚感
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富士山頂の山小屋にLTEのアンテナを設置する。強風が吹きすさぶ中、危険が伴う作業だ 美しい稜線から優雅な印象を受ける富士山だが、実際に登ってみると植物は乏しく荒涼とした景色が続き、無骨な厳父のように感じてしまう。強風が吹く山頂は一年で一番温暖な8月でも平均気温が6度しかなく、とりわけ手厳しい。その過酷な環境で毎年山開きの時期になると、NTTドコモのアンテナ設置工事が行われる。通信インフラを支えるという強い使命感が動機づけになっている。(長浜明宏)
標高3776メートル。山小屋の屋根にドコモのアンテナが取り付けられていく。強風が吹きすさぶ中では危険な作業になるが、慣れた様子でボルトとナットを締めて台座に電波の増幅装置を固定していく。7月15日昼過ぎ、昨年に続き富士山頂が高速データ通信LTE「Xi(クロッシィ)」のエリアとなった。
「天候に左右されることが一番難しい」と東海地区のLTE化を担うドコモCS無線アクセス計画部の波多野幸泰さん。今年は台風の影響で工事が3日延期になった。「機材を積んで山頂に上がれたとしても、天気が悪くて作業できないこともある」という。
環境省と文化庁からアンテナの山頂設置が許可されているのは山開きの期間だけ。そのため夏が終わるとアンテナを撤収し、翌年夏に再び設置するという作業が恒例行事として繰り返されていくわけだ。
麓と山頂の温度差は20度近く。Tシャツ1枚で富士宮5合目から登り始めた記者だが、山頂ではTシャツ2枚を重ね着し、パーカーとウインドブレーカーを着込んでもまだ寒い。途中、携帯したボンベで酸素を補給しながらの登頂だった。
富士山頂でのアンテナ設置は携帯電話向けインターネット接続サービス「iモード」が始まった1999年にスタート。昨年からスマートフォン時代に合わせてLTE化が完了。そして今年、6月からVoLTE(ボルテ=ボイス・オーバーLTE)対応の端末提供が始まったことで、さらに高音質通話や高画質のビデオコールなどその恩恵を味わえるはずだ。
仕事でお世話になっている世界を旅するフリーライター、鈴木博美さんに山頂からビデオコールを発信し、クリアな画面越しに眼下に広がる絶景を楽しんでもらう。国内では執筆に追われて遠出する機会の少ない博美さん。自宅のある東京・浅草から高音質通話で届く声はいつもより1オクターブ上がっており、高揚感が伝わってくる。
波多野さんが「日の出の時間帯にトラフィック(データ通信量)が非常に多い」と話すように登山者が山頂からメールで画像を送ったり、SNSに画像や動画をアップするケースが増えている。VoLTE対応の端末が登場したことで、ネット上でも一層グレードの高い御来光が拝めることだろう。
さて、山頂での取材を終えた記者だが、ついつい欲張って火口周辺を回るお鉢巡りをしたため、予定時刻より1時間以上遅れての下山となった。その間、まさかの遭難に備えてバッテリーを保持するためにスマホの電源は切ったままだった。
細かく砕けた火山岩に足を取られて疲労困憊の中、下山して電源を入れると博美さんから「心配したよー!」とお叱りの電話。登山道がすべてエリア内にもかかわらず、電源を切ったことで余計な心配をかけてしまったようだ。博美さん、ごめんなさい。