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高齢者の自立支援機器、悩みは高価格 パナソニックは介護ロボットに注力
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2020年の次世代自立支援機器の市場規模予測 2025年の市場規模が100兆円規模に拡大するとの予測もある高齢者向け市場で、介護関連に参入する企業が相次いでいる。将来の介護人材の不足を見据え、高齢者の自立支援を促す機器の開発が目立つ。国の補助金などがあるものの、機器の価格が高いことが悩みの種で、海外を含めた市場開拓が課題となっている。
パナソニックが24日発表した、高齢者や障害者がベッドから立ち上がる動作や歩行を支援する「自立支援型起立歩行アシストロボット」と、高齢者のベッドでの状況を把握する「みまもりシステム」。16年度に介護施設や病院向けに発売する。
自立支援型起立歩行アシストロボットは、立ち上がりや歩行が不安定な高齢者や障害者向けで、ベッドからトイレの排泄(はいせつ)までの移動をサポートする。被介助者の上半身に吊(つ)り具を装着してロボットのアーム部分とつないで起立や歩行を助ける。
ロボットには、被介助者の動きを読み取るセンサーが内蔵されており、足りない力をうまく読み取り、アシストする。パナソニックエコソリューションズの志方宜之参事は「人がかける力に応じて、ロボットが動作することで協調できるのが大きなポイントだ」と話す。
一方、みまもりシステムは特別養護老人ホームや介護サービス付き高齢者施設向けだ。ベッドの下にセンサーを取り付け、被介助者の呼吸数や体動から異常を読み取る。
厚生労働省は、25年に認知症の高齢者が470万人になると試算する。このシステムは夜間の徘徊(はいかい)管理にも有効で、パナソニックは、在宅介護する家庭への販売も視野に入れる。
パナソニックはまず、この2つのシステムを自社で運営する介護サービス付き高齢者住宅や日帰りのデイサービスなどに導入し、16年度に一般向けに発売する。20年度に介護ロボットやシステムの売上高50億円を目指す。エコソリューションズが担当する介護関連のエイジフリー事業の売上高を25年度に2000億円に伸ばす。
総務省によると、25年の日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は30.3%、75歳以上の後期高齢者は18.1%になる見込み。みずほコーポレート銀行によると、25年の高齢者向け市場は101兆3000億円に達し、このうち介護市場は07年比で約2.4倍の15兆2000億円まで増えると推計。三菱総研は介護職員の数が25年に100万人不足すると指摘する。
介護の人手不足に伴い、高齢者や障害者の自立支援が重要となる。経済産業省や厚生労働省は昨年、「ロボット介護機器5カ年計画」を立ち上げ、企業の介護ロボット開発の助成金を拡大するなど、後押ししている。
企業も介護・福祉市場を成長分野と捉えて、高齢者の自立を支援する機器の開発に力を入れている。
トヨタ自動車は5月、歩行練習のリハビリ用ロボットの臨床研究モデルを開発。ホンダも昨年、病院向けに歩行支援の介護機器を発売。大和ハウス工業も、脚力や歩行機能をサポートするロボットスーツや自動排泄処理ロボットを投入した。
ただ、施設などで普及するには価格が大きな課題だ。パナソニックの自立支援型起立歩行アシストロボットも、「100万円を切りたい」(同社)というレベルで、量産しないと採算が取れないという。
今後は国内市場だけでなく、海外の先進国で販売するなど、市場拡大への取り組みが求められそうだ。(黄金崎元)