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「本態性振戦」切らずに治す 高齢者に多い原因不明の手の震え
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超音波集束装置を使っての治療前、手が震え、渦巻きや平行線に沿ってうまく線が引けない 高齢者に多い、手や頭、声などが震える原因不明の病気「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」の治療に、超音波集束装置を使う治験が行われている。頭蓋骨を切開せず、外から超音波を脳の奥深くに集中照射して治療できる。これまで体への負担などから治療が難しかった患者も受けられる可能性があるという。(寺田理恵)
本態性振戦は命にかかわる病気ではないこともあり、「年のせい」と見過ごされがちだ。しかし、震えがひどい場合、文字がうまく書けなかったり、箸やコップを持つことができず、食事に介助が必要となったりするなど日常生活に著しい支障を来す。
治療法は薬物療法が中心で、脳に電極を埋め込む手術や脳のごく一部を破壊する手術もある。ただ、高齢者の場合は薬の副作用や手術に伴う合併症の恐れがある。
治験中の治療法は、イスラエルに本社を置く企業が開発した超音波集束装置「エクスアブレート・ニューロ」をMRI(磁気共鳴画像装置)に接続して使用。患者が装着したヘルメットのような機器から脳のごく一部に超音波を照射し、熱変性させる。
イスラエルのほか、日本、米国、カナダ、スイス、韓国で実施され、コップをうまく持てず、水を飲むのが困難だった患者が治療後、すぐにコップを持てるようになるなど生活の質の向上が期待されている。
日本では新百合ケ丘総合病院(川崎市麻生区)で昨年5月から行われ、既に51~79歳の男性5人が治療を受けた。同病院脳神経外科の阿部圭市医長によると、いずれも震えが改善され、副作用も生じていない。
頭蓋骨を切らずに脳に超音波を使う機器は日本で初めてで、「脳の熱変性させてはいけない所に超音波を当てるとまひが出る。この治療法では全身麻酔を使わないため、治療中に患者の反応を確認しながら、安全な所を絞り込むことができる。改善していくのが治療中に分かる」。
同病院では今後、さらに5~10人に治験を実施する。治験は2泊3日で経過観察も行っているが、治療は約3時間で終わるため、将来的には日帰りが可能となり、費用は診断と治療で数十万円となる見込みだ。
本態性振戦は、手足が震える進行性の難病のパーキンソン病と間違えられることが多い。阿部医長は「パーキンソン病は何もしないときに震えるのに対し、本態性振戦は細かい動作で震えが起きる。震えを病気と思わず、病院に行かない人が多いが、パーキンソン病であれば早く治療を始める方がいい」と、震えを軽視しないよう注意を促している。
「年のせい」と見過ごされがちな本態性振戦は医療機関で受診しない人が多く、病名もあまり知られていない。特徴は「スプーンや箸を使いづらい」「文字がうまく書けない」「宴席でお酌をするときに震える」「緊張したときに声が震える」「頭が震える」など。
本態性振戦の可能性があるかどうかのチェックは、渦巻きの線を肘をつかずに内側から外側へなぞってみる。線から大きく外れる場合は要注意。横に引いた平行線の間にもう1本、線を引いたとき、上下の線に当たる場合も注意が必要だ。手が縦に震える人は本態性振戦の可能性がある。