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日本向けクロマグロ安定供給へ活路 クロアチアの水産養殖大手買収
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ジェイトレーディングが買収を決めたカリ・ツナのクロマグロ養殖場=クロアチア すしダネに利用される天然クロマグロの減少や世界的な魚消費拡大を受け、中堅水産商社のジェイトレーディング(東京都港区)が地中海に面するクロアチアの養殖大手、カリ・ツナを買収したことが4日、分かった。
クロマグロの2大産地のうち資源保護で先行した大西洋は来年から漁獲枠の拡大が決まり、日本向け安定供給で活路を見いだす。一方、日本を含む太平洋は天然資源が枯渇しており漁獲規制を強化。近畿大と豊田通商連合や三菱商事子会社など、卵から人工で育てる完全養殖が脚光を浴びている。
ジェイトレーディングは、国内の投資ファンド、インテグラルと共同でカリ・ツナの全株式を取得することで親会社のメキシコ企業と契約を結んだ。買収金額は約12億円。日本企業が地中海の養殖事業を買収するのは初めて。回転すしチェーンなどに供給し今後は世界的な日本食ブームでマグロ需要が拡大する欧米やアジア販路も開拓する。
ジェイトレーディングの神戸治郎社長は「世界的な需要拡大で買い負けが増える中、上流に進出することで顧客ニーズに応えたい」と狙いを話す。
カリ・ツナは地中海で「畜養」と呼ばれる短期間養殖の先駆者。同地域最大級の生産設備(年産5030トン)を持ち、日本向けで知られる。今は生産が落ち込むが、生産効率化や販路拡大で生産量を拡大する。
日本の年間のクロマグロ供給量は現在、養殖も含め3万トン弱で、太平洋産が約6割、大西洋産が約4割を占める。
だが、新たに絶滅危惧種に指定された太平洋クロマグロは来年から未成魚漁獲量の半減など規制が強化され、数年後に調達先の割合が逆転する見通し。大手商社も規制緩和が決まった大西洋で安定供給先を増やそうと注目している。
一方、太平洋の規制強化に対応し、近畿大は豊田通商と組み卵から育てた「近大マグロ」の生産を2020年に昨年の3倍に増やすことを決めた。
三菱商事子会社の東洋冷蔵も天然稚魚に頼らない完全養殖ブランド「ツナプリンセス」を昨秋から鮮魚チェーンなどで販売。今年度の出荷を前年度の10倍の300トンに増やす。
ジェイトレーディング/クロアチアの養殖大手を買収
東洋冷蔵(三菱商事子会社)/完全養殖ブランド「ツナプリンセス」の生産を今年度300トンに増産
近畿大と豊田通商/完全養殖の「近大マグロ」を2020年に250トンに増産
極洋/17年から完全養殖の出荷を200トン規模で開始