SankeiBiz for mobile

海保の前でサンゴ密漁「あれが現実」 小笠原 漁場占拠する中国漁船

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

海保の前でサンゴ密漁「あれが現実」 小笠原 漁場占拠する中国漁船

更新

巡視船の前で悠々と網を巻き上げる中国漁船の船員=2014年11月9日、東京都の小笠原沖(大山文兄撮影)  東京都の小笠原、伊豆両諸島沖に10月末、サンゴを密漁する中国漁船が200隻以上押し寄せた。海上保安庁が懸命に捜査と警備にあたるが、「宝石サンゴ」と呼ばれる高価な赤サンゴを狙う中国漁船とのイタチごっこが続く。

 荒波の中「きっといる」

 小雨がぱらつく今月9日午前8時、小笠原諸島の父島・二見漁港を漁船「達良丸(たつりょうまる)」で出港し、サンゴ密漁の現場に向かった。9.7トンの達良丸は荒波にもまれ、甲板には波しぶきが降り注ぎ、投げ出されそうになる。「こんな日にわざわざ漁に出ようとは思わないね。でも、やつら(中国漁船)はきっといるよ」。船長の金澤多可志さん(39)は言い切る。

 仲間の漁船から無線で情報が入った。「父島と母島の間にいたってよ」。金澤さんは針路を南に切った。「やはり、いたね」。父島から16キロの領海内にレーダーが船影を捉えた。「縄場(なわば)」と呼ばれる好漁場だ。

 肉眼で確認できるまで近づくと、海保の巡視船「するが」の前で網を回収して逃げようとする中国漁船がいた。「あれが今の小笠原の現実。内地の人にも分かってほしい」。金澤さんは中国漁船をにらみつけた。

 「指くわえ見てるだけ」

 小笠原島漁協によると、中国漁船は今年の正月ごろから姿を現した。網を投げ入れ、水深100~250メートルに生息する赤サンゴをさらっていく。初めは暗闇に紛れ、網の投げ入れなどの際だけ、ライトをつけて隠れるように密漁をしていた。ところが、6月ごろから数が増え、10月には100隻以上が昼夜を問わず、堂々と密漁するように。

 サンゴの生息する場所は豊かな漁場でもある。強化プラスチック製で約10トンの日本漁船に対し、中国漁船は鉄製で15倍の150トン前後。しかも5、6隻で船団を組むケースが多く日本漁船が割って入れない。

 地元漁師の石井勝彦さん(62)は「邪魔だと思うと、こっちの網を切ったりする」と嘆く。漁場は中国漁船に占拠され続け、満足に漁ができない状態が続いている。

 石井さんは「年末にかけては魚の値が上がる時期。なのに指をくわえて見ているだけだ」と唇をかむ。

 達良丸のレーダーが捉えた6隻の中国漁船のうち5隻は巡視船から離れようと一列になって領海の外へ向かっていく。中には、船首に日の丸を付けた船もいた。1隻だけはその場を離れない。「網の巻き上げが間に合わなかったんだ」と金澤さん。

 巡視船は中国語で警告を発するが、甲板にいた雨具姿の中国人船員数人は網を巻き上げる手を止めようとしない。白い歯を見せ、笑みを浮かべながら作業を続ける船員も。巡視船は警告を発するだけで手出しはしない。

 約5分後、網を巻き上げた中国漁船は悠々と去っていった。「いったい巡視船は誰を守っているんだろうか」。金澤さんはため息をついた。(森本充/SANKEI EXPRESS

ランキング