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政治
【日中首脳会談】尖閣、小笠原の安全は 期待と警戒
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小笠原諸島・父島(後方)の周辺海域を航行する中国のアカサンゴ密漁船とみられる外国漁船。中国船による密漁に、地元は「海が乗っ取られる」と警戒感を強めている=2014年11月7日午後4時10分(共同通信社ヘリから撮影) 中国・北京で10日、安倍晋三首相(60)と中国の習近平国家主席(61)による日中首脳会談が実現した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)や小笠原諸島(東京都小笠原村)に中国公船や中国の密漁船が迫る事態は、今回の首脳会談で改善に動くのか。地元関係者の声からは、期待感と警戒感が交錯した複雑な心境がうかがえる。
中国公船が領海侵犯を繰り返す尖閣諸島。八重山漁協の上原亀一(かめいち)組合長(52)は、「対立だけでは前に進まない」と首脳会談の成果に期待を寄せる。石垣市の中山義隆市長(47)も「緊張関係が少しは落ち着くのでは」との見方を示した。
ただ、首脳会談をめぐり中国側は、尖閣諸島の領有権問題の存在を認めるよう日本側に強く迫った。中山市長は、かつての中国の最高実力者、●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏が持ち出した領有権の“棚上げ論”を念頭に「棚上げのような形で手を打ち、そのままにしておくとまた10年後、20年後に中国に押し込まれてしまう」と警戒感をあらわにする。
中国漁船によるサンゴ密漁に揺れる小笠原諸島でも思いは切実だ。父島にある小笠原島漁業協同組合の作業場では10日、漁師らが会合を開いた。思うように出漁できない状態が続き、いらだちがピークに達しており、漁師からは政府の対応への不満が続出した。
中国漁船に急接近されたという市川潤さん(44)は「海が乗っ取られるんじゃないかとみんな思っている。政府は領海を守る断固たる構えで中国側に対処してほしい」。小川剛さん(40)は「政府は中国側にしっかりと状況を確認する必要もある」と注文を付ける。
「首脳会談によって現状が際立って変わるとは考えにくい。外交交渉を進めつつ海上警備などの対策強化を急ぐ必要がある」。東海大学の山田吉彦教授(海洋政策)はこう指摘する。
山田教授は会談の背景について、経済面で日中関係がより深まる中で「強硬だった中国政府も宥和へ動かざるを得なかった」と分析。「外交で押し切られてきた日中関係が変わるきっかけになり得る」と話す。
一方で、山田教授は日本周辺に現れる中国船への対策が限界に達しつつあると強調。「上陸されてからでは遅い。海上保安庁、海上自衛隊、警察の連携強化や役割分担の明確化など対策を急がなければならない」と警鐘を鳴らした。
≪漁船141隻を確認≫
東京・小笠原諸島周辺などで問題化している中国漁船によるサンゴ密漁に絡み、第3管区海上保安本部(横浜)は10日、巡視船や航空機による監視活動を行い、小笠原諸島周辺や排他的経済水域(EEZ)内で、中国のサンゴ漁船とみられる計141隻の外国漁船を確認したと発表した。
第3管区海上保安本部によると、このうち小笠原諸島周辺では計120隻を確認し、うち10隻は領海内、110隻はEEZ内にいた。
≪民主案、海保対処を明記≫
民主党が今国会への提出を目指す、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態に対処するための領域警備法案の概要が10日、判明した。武装漁民による離島の不法占拠などの対処に際し、自衛隊の海上警備行動の発令の迅速化を特例化するなど現行法で生じている防衛法制の隙間をうめる。
法案は自衛隊の治安出動には時間がかかることや自衛隊の武器使用が制限されている状況の改善が目的。海上保安庁など警察機関の対処を原則とし、自衛隊との連携を強化し、海上警備行動の手続きの簡素化を行う。小笠原諸島周辺の中国漁船によるサンゴ密漁問題などの安全保障環境の変化も踏まえた。
政府・与党が集団的自衛権の行使容認による安全保障関連法案の提出を先送りする中、民主党は維新、次世代、みんな各党と来週にも共同提出する構えで、与党を揺さぶる狙いもある。(SANKEI EXPRESS)