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【日中首脳会談】「会うことに意味」 日本に主導権

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【日中首脳会談】「会うことに意味」 日本に主導権

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【日中首脳会談】安倍晋三(しんぞう)首相発言ポイント=2014年11月10日、中国・首都北京市  3年ぶりに実現した安倍晋三首相(60)と中国の習近平国家主席(61)による日中首脳会談は、個別の具体的懸案の処理や重要政策テーマを協議することではなく、会談を開くこと自体が主目的だった。

 「きょう両首脳が直接会い、関係改善に向けて率直な話し合いを持ったことに最大の意味がある」

 会談後、政府筋はこう振り返った。会談前には外務省幹部も「今回は、会って会談して写真を撮ればそれでいい」と語っていた。

 弱まる対日批判

 会談冒頭、首相と握手を交わした習主席の表情はぎこちないままだったが、日本側としてはいったん握手をしてしまえば主導権も握れるという計算もあった。日中外交筋はこう語る。

 「第1次安倍政権当時の平成18(2006)年に、首相が胡錦濤国家主席と会談したときもそうだ。会って握手した瞬間にこっちが強い立場になる。中国側は対日方針を転換して会った以上、関係が悪くなると習執行部の失点となって後ろから矢が飛ぶ。だから一生懸命関係をよくしようとすることになる」

 会談で第1次政権当時の首相が提唱した「戦略的互恵関係」がキーワードになったことも、日本側の狙い通りだ。これまで中国側は、いくら首相が「日本側のドアは開かれている」と呼びかけても、歴史問題などで対日非難を強めるばかりで応じてこなかった。にもかかわらず今回、日本に要求してきた靖国神社不参拝の確約や、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権問題の存在確認など諸条件を引っ込めて会談したことで、日中関係のあり方は変わった。

 「押さえ込み」開始

 中国としては、主張の一貫性を保つため国内向けに安倍政権は「いい方向に変わった」「反省した」と宣伝せざるを得ない。そうなると、今後は対日批判を弱めていく可能性が高い。

 実際、会談でも「靖国」「尖閣」という言葉への言及は一切なかった。この問題で日本を批判すると、会談実施と整合性がとれず、中国国内で政権批判を招くことになりかねないからだ。

 「今後も徐々に、関係改善の努力をしていきたい」

 会談で習主席が「徐々に」という言葉を用いたのも、日本の対応を見守りつつ少しずつ軌道修正を図りたい中国側の意向を反映しているといえる。

 もちろん日本政府は、会談したからといって諸懸案がただちに解決するとはみていない。尖閣諸島についても中国側が領有をあきらめることはないとみているが、偶発的衝突を避ける「海上連絡メカニズム」の運用も合意したことで、当面の危機管理上の意味は大きい。政府高官は今回の会談をこう位置づける。「尖閣諸島問題などで中国を押さえ込むためのキックオフだ」(北京 阿比留瑠比/SANKEI EXPRESS

 ≪「妥協したわけではない」 中国、国内にアピール≫

 10日の中国国営中央テレビ(CCTV)は、日中首脳会談での関係改善に向けた双方のやり取りにはほとんど触れず、習近平国家主席が歴史認識問題などで日本に厳しく注文を付け、安倍晋三首相が「日本は引き続き平和国家としての歩みを堅持する」と語った場面を強調して伝えた。中国国内の視聴者に対し、首脳会談を中国が主導したと印象づける狙いがあるとみられる。

 2012年11月に発足した習指導部は、保守派や軍の支持固めのために対日強硬姿勢を貫き、政治分野だけではなく日本との青少年や文化面の交流も中止した。しかし、発足から約2年が過ぎても、尖閣諸島や靖国神社の問題で〝譲歩〟を引き出すことはできなかった。

 また、日中の対立が米中関係にも影響を与え、中国の外交環境は悪化。日本企業の対中投資も減少するなど、国内経済にも深刻な影響が現れ始めた。こうした中で行われた今回の首脳会談では、習氏が自らの求心力を維持するため、「決して日本に妥協したわけではない」とアピールする必要があったようだ。

 首脳同士がようやく顔を合わせたとはいえ、日中関係が本格的に改善する可能性はそう高くはない。先の大戦終結から70年となる来年、中国国内ではさまざまな記念イベントが控えており、日中戦争をテーマとしたテレビドラマや映画も多く作成されている。

 「中国の夢の実現」という民族主義色の濃いスローガンを掲げる習政権は今後も、メディアなどを利用して対日批判を展開し、軍事面でも海や空などで拡張を目指す方針は変わらないとみられる。両国国民の互いに対する感情も含め、関係改善への道筋は決して平坦(へいたん)ではない。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

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