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政治
安倍首相北京入り 日中改善に意欲 戦略的互恵関係「原点に立ち戻る」
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中国・首都北京市周辺地域 安倍晋三首相(60)は9日午後、北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、政府専用機で北京国際空港に到着した。12日までの滞在中に中国の習近平国家主席(61)と初の首脳会談に臨み、冷却化した両国関係の修復に向けた足掛かりを得たい意向だ。また、首相は9日、カナダのスティーブン・ハーパー首相(55)やロシアのウラジーミル・プーチン大統領(62)と北京市内で会談。プーチン氏とは、ウクライナ情勢を受けて停滞している、北方領土問題の解決に向けた平和条約交渉を加速させることなどを申し合わせた。
羽田空港出発に先立ち、安倍首相は記者団に対し、「日中関係を改善させたいと考えている。(日中)首脳会談が実現すれば、(東シナ海での)偶発的衝突を避けるための海上連絡メカニズムを開始し、戦略的互恵関係の原点に立ち戻って両国関係を発展させていくとのメッセージを伝えたい」と述べた。同時に「日中関係を改善させたいという思いは2006年の第1次政権時から変わりはない」と強調した。
地球儀を俯瞰(ふかん)する外交を掲げる第2次安倍政権での首相の訪問国数は、今回の中国で50カ国目。日中両政府は9日も、一昨年5月以来となる日中首脳会談の日時や場所などをめぐって、最終的な調整を進めた。
また、安倍首相は到着後、APEC閣僚会議のため北京入りしていた岸田文雄外相(57)から、日中首脳会談の調整状況や8日の王毅中国外相(61)との会談などについて報告を受けた。
カナダのハーパー首相との会談では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結に向け、連携を強化する方針で一致した。エボラ出血熱の感染拡大を阻止するための取り組み強化も申し合わせた。両首脳はエネルギーや安全保障の分野での協力推進を確認。安倍首相は、カナダ産の液化天然ガス(LNG)輸入のため、ハーパー氏に輸出関連の施設を速やかに整備するよう求めた。
安倍首相は日中首脳会談の開催に向けた動きを説明し、ハーパー氏は「両国の対話は好ましいことだ」と評価した。
安倍首相は12日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するため、北京からミャンマー・ネピドーに移動し、ミャンマーのテイン・セイン大統領(69)と会談。さらに20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせ、14日にオーストラリア・ブリスベンに入る予定だ。バラク・オバマ米大統領(53)とも、外遊中に会談する方向で調整しており、17日に帰国する。
≪露大統領と会談 早期来日で意見交換か≫
安倍晋三首相は9日夜、ロシアのプーチン大統領と北京市内で会談。今秋の実現が見送られたプーチン氏の来日や、ウクライナ情勢を受けて事実上ストップしている北方領土交渉を議題に意見交換する見通しで、首脳間の個人的な信頼関係を積み上げることによって、来年の早期訪日と日露関係の進展につなげられるかが焦点だ。
安倍首相とプーチン氏の首脳会談は、2012年12月の第2次安倍政権発足から今回で7回目。両首脳は10月にイタリア・ミラノで約10分間会談した際、首脳間対話の重要性を確認している。首相は2月、ロシアでソチ冬季五輪開会式に出席した際の会談で、プーチン氏の今秋の来日で合意した。しかし日本は3月、ロシアによるウクライナ南部クリミア編入問題を受け、対露制裁を開始。ロシア側が反発したため、具体的な来日日程の調整が進まない状況となった。
安倍首相が、プーチン氏との首脳会談で個人的な信頼関係の維持に腐心するのは、日露関係の冷え込みに歯止めをかける思惑からだ。プーチン氏の早期来日実現や北方領土交渉の進展につなげる狙いだが、日本が外交の基軸とする同盟国・米国はロシアに強硬姿勢で臨んでおり、対米配慮とどう両立させるかが課題となる。
一方、プーチン氏には、安倍首相との会談で、日本との経済連携強化を引き出し、停滞する景気対策や極東シベリア開発などにつなげる狙いがある。同時にウクライナ問題で対露最強硬の日米のずれを露呈させ、分断を図る思惑ものぞかせる。
ロシアは石油・天然ガス輸出に頼る経済の構造改革を先送りにしたつけが回り景気が減速していたさなかに、ウクライナ危機が先鋭化した。欧米の経済制裁は徐々に効き目を表し、原油価格下落や高インフレも重なって経済は八方塞がりだ。
プーチン氏はアジア重視を一段と強め、中国とは巨大な天然ガス輸出契約を結ぶなど良好な関係を維持する。だが過剰な中国依存を防ぐため多角化も必須。経済規模の大きい隣国、日本との連携強化は喉から手が出るほど欲しいところだ。
安倍氏との良好な関係の演出は、経済面で連携を図るだけでなく日米関係にくさびを打つ意味合いもある。(共同/SANKEI EXPRESS)