SankeiBiz for mobile

経済再生争点 政権内に年内解散論

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

経済再生争点 政権内に年内解散論

更新

10月27日、自民党の役員会に臨んだ安倍晋三(しんぞう)首相(右)と谷垣禎一(さだかず)幹事長。にわかに年内解散論が浮上する中、首相の胸中が注目される=2014年、国会内(酒巻俊介撮影)  安倍晋三政権内に、年内に衆院解散・総選挙を断行すべきだとの声が出てきた。9月の内閣改造の目玉だった女性閣僚が一度に2人も辞任し、民主党などの野党は「政治とカネ」の追及に明け暮れている。しかし、報道機関の内閣支持率は急落していないことから、来年10月の消費税率の10%への引き上げを先送りし、「経済再生」を争点に掲げて一気に反転攻勢に出るというシナリオが浮上しているのだ。

 支持率急落していない

 「各社の傾向はばらばらだ」

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は27日の記者会見で、朝日新聞と日経済新聞・テレビ東京が10月27日付朝刊で報じた世論調査結果の感想について、余裕の表情で答えた。

 内閣支持率は、24~26日実施の日経・テレ東が48%と5ポイント低下し、25、26両日に調査した朝日は49%で3ポイント上昇した。

 首都圏500人を対象に行ったフジテレビ「新報道2001」の直近の調査も、内閣支持率は55.2%。政党別の支持率でも自民党が37.0%なのに対し民主党は5.0%にとどまり、「国会審議を進めるべきだ」との回答は72.6%だった。

 この結果に、政府高官は「国民は審議を望んでいる」とし、世論は野党の国会でのスキャンダル追及にうんざりしているとの見方を示した。

 一方、消費税の再引き上げに関し、公明党の山口那津男(なつお)代表(62)は再引き上げを先送りした場合について「『アベノミクス』がうまくいかなくなったから、引き上げないという判断をしたとの烙印(らくいん)を押される」との懸念を示している。首相が再引き上げを先送りすれば、民主党は「アベノミクスは失敗した」と攻撃しそうだ。

 それでも、与党内には再引き上げを先送りすべきだとの声が強まっている。

 安倍首相(60)は、11月17日に発表される7~9月期の国内総生産(GDP)速報値や12月8日に発表されるGDP改定値を見て判断する方針だが、明るい材料に乏しいのが現状だ。首相は27日の自民党役員会で「物価上昇や国民生活、経済動向を注視していかなければならない」と述べた。

 「再増税先送り決断後」に

 今月22日には、消費税再増税の1年半先送りを唱える自民党の山本幸三衆院議員(66)が勉強会「アベノミクスを成功させる会」を発足させた。山本氏は菅氏と連携して動いているとされ、ある自民党中堅は「再増税先送りを決断した上で衆院を電撃解散し『経済を再生させたい』と訴えれば、衆院選に勝てるのではないか」と語る。

 民主党の枝野幸男幹事長(50)は25日のテレビ東京番組で「早く解散してくれるなら、こんなにありがたいことはない」と述べ、早期の衆院解散を“歓迎”する姿勢をみせた。政権内に「政治とカネ」の問題が続出している今が好機との判断があるようだが、与党側は野党の選挙協力態勢が整っていないこともあり、枝野氏の発言は「空威張りだ」(自民党中堅)と冷ややかにみている。

 解散を躊躇(ちゅうちょ)させる要因もないわけではない。

 自民党の勢力が現在の294から減らし、公明党と合わせた獲得議席は、衆院での再議決や憲法改正の発議に必要な3分の2以上が困難になる可能性が高い。一票の格差をめぐり「違憲状態」解消に向け、衆院選挙制度調査会で議論している真っ最中という事情もある。

 「内閣改造をするほど首相の権力は下がり、解散をするほど上がる」

 佐藤栄作元首相(1901~75年)のこの言葉を、安倍首相も知っているはずだ。(沢田大典/SANKEI EXPRESS

 ≪野党の候補者調整、難航必至≫

 年内の衆院解散論がささやかれる中、民主党と維新の党は国会での共闘関係を強めている。だが、次期衆院選で目指す選挙協力では維新が候補者100人以上の擁立を宣言しており、調整は難航が必至だ。

 民主、維新両党の国対委員長は27日、国会内で会談した。安倍晋三首相が出席する30日の衆院予算委員会を前にした「戦略会議」との位置付けで、両党で質問のすみ分けを行った上で首相を追及することを確認した。

 一方、選挙態勢については、維新の江田憲司共同代表(58)が23日の記者会見で「候補者100人以上の擁立を目指す。新人発掘を精力的に進めていきたい。民主党とバッティングすると考えていたら、できるわけない」と語り、独自に取り組みを本格化させる考えを示した。民主党との選挙協力に否定的なのは、共同代表の橋下(はしもと)徹大阪市長(45)が「大阪都構想」などの政策で民主党や同党支持労組の自治労などと対決していることが大きい。

 これに対し、民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(65)は27日の記者会見で「国会での共同歩調は順調だ。選挙の調整うんぬんはそこから先の話だ」と言葉を濁した。

 野党第一党の民主と第二党の維新が小選挙区の候補者を調整しなければ、自民、公明両党相手に共倒れするのは明らかだ。民主党の公認内定者は約130人、維新は約70人で、両党だけですでに30選挙区で競合している。選挙協力に合意したとしても、現実の調整は難航が予想される。(SANKEI EXPRESS

ランキング