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沈黙する最大派閥 代替わりへ過渡期 

 安倍晋三首相の出身派閥で自民党内最大規模を誇る町村派(清和政策研究会)の存在感低下が著しい。第2次安倍政権発足以降、「政高党低」といわれ続けているが、その一因に派閥の弱体化があるのは否めず、かつ最大派閥の静けさは、官邸主導の印象を強めている。町村信孝元官房長官の求心力低下が指摘される中、今の清和会は安倍派への過渡期、との見方は強い。首相を次々と輩出しているこの集団はどこに向かおうとしているのか-。

 「皆様には一致団結して安倍政権を屋台骨として支えていただいている。改めて御礼申し上げたい」

 5月13日夕に都内のホテルで開かれた町村派の政治資金パーティー。首相は謝意を示し、町村氏は「アメリカの大統領なら2期8年がごく普通だから、安倍さんにはそれを参考にしてもらってもいいんじゃないかと思うが、どうでしょうか」と長期政権への期待感を表明した。

 存在感のない町村氏

 遡(さかのぼ)ること約1年8カ月前の2012年9月。民主党政権の体たらくもあり、自民党が政権を奪還するのが目に見えていた中で行われた総裁選に安倍、町村両氏を含む5人が立候補した。だが、選挙期間中、町村氏は体調不良を訴え、検査入院。いまや派内で「町村首相待望論」はほとんど聞かれず、町村氏自身、来年9月の任期満了に伴う次期総裁選への出馬に意欲を示すことはもはやない。

 2人のギクシャクした関係は次第に影を潜めていった。同時に町村氏の存在感は低下。町村派の存在意義も問われようとしている。

 「看板は町村さんだけど、実質的に切り盛りしているのは細田博之元官房長官だ。今の清和会にリーダーはいない…」

 そう語るのは派閥の中堅議員。それは清和会の重鎮クラスが相次いで政界を引退したことと無関係ではない。森喜朗元首相は、20年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長としての業務にいそしみ、小泉純一郎元首相は「脱原発」の国民運動の旗振り役を務めている。福田康夫元首相も政界から姿を消し、息子に地盤を譲り渡した。

 それでも現在、清和会所属議員は92人で第1派閥。12年11月の衆院解散前は44人だったから、倍以上に増えている。そのワケを派閥関係者はこう解説する。

 「町村さんが首相になることを期待して所属議員が増えたのではない。安倍派になるのをにらんでのことだ。安倍さんはいずれ首相を辞めて派閥に戻ってくる。そのときまで、ちゃんと組織を保っておくことが大事なんだ。町村さんだって、そのことはよく分かっている」

 もちろん、安倍派に衣替えするだけでは、清和会所属議員に「うまみ」はない。少なからずの議員が安倍首相の辞任後に期待するのは、安倍氏が「キングメーカー」として君臨することだ。

 脅威なく「安泰」

 第2派閥の額賀派(平成研究会)は54人、第3派閥の岸田派(宏池会)は45人。両派が手を握れば99人になり、町村派の92人を上回る。だが、党内政局に明け暮れ国民の信頼を失った民主党政権の二の舞は避けたいとの思いも手伝い、首相や清和会に対し、政争を仕掛ける空気はほとんどない。

 宏池会名誉会長の古賀誠元幹事長は首相を「愚かな坊ちゃん」と批判するなど、抵抗勢力の代表格となっている。だが政界を引退した古賀氏の発言がクローズアップされるのは、党内にこれといった抵抗勢力が存在しないことの裏返しともいえる。

 「存在感が薄くても、他派閥が脅威じゃないから清和会は安泰だ」

 派内からはそんな余裕の声が漏れる。(坂井広志/SANKEI EXPRESS

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