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政治
秘密保護法案で首相表明 政府内に「保全監視委」設置
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安倍晋三首相(59)は12月4日の参院国家安全保障特別委員会で、機密を漏らした公務員らへの罰則を強める特定秘密保護法案に関し、特定秘密の指定や解除の妥当性をチェックするため、各省庁の事務次官らによる「情報保全監視委員会」を内閣官房に設置する考えを表明した。与党は5日午後の特別委で採決、可決の上、会期末の6日に参院本会議で成立させる構えだ。
首相は特定秘密の指定・解除に関する統一基準を策定するため、報道関係者や法律の専門家らで構成する第三者機関「情報保全諮問会議」の設置も明らかにした。いずれも法施行までに設置する。特定秘密を記録した公文書の廃棄の可否を判断する審議官級のポストを新設する考えも示した。
首相はこの後、今国会初めて開かれた党首討論で「しっかりと議論がなされてきた。どこかで終局させる判断をしなければならない」と述べ、法案の早期成立に理解を求めた。
これに対し、民主党の海江田万里(かいえだ・ばんり)代表(64)は「官僚による官僚のための情報隠しの法案だ」と批判。「何が何でも法案を仕上げてしまうことに無理がある」と慎重な審議を要求した。法案修正で与党と合意したみんなの党の渡辺喜美代表(61)も「丁寧に審議するために会期を延長すべきだ」と主張し、6日に採決が行われれば反対する可能性を示唆した。
参院特別委は4日、さいたま市で地方公聴会を開催したが、共産党以外の野党は与党の議事運営に反発し、参加しなかった。
≪割れる野党 会期内成立へ与党強気≫
今臨時国会は最終盤を迎え、特定秘密保護法案をめぐる与野党の攻防は12月4日、激しさを増した。法案成立に向け強気の姿勢を崩さない政府・与党に対し、慎重審議を求める野党側は足並みをそろえて反発。だが、抵抗勢力の度合いを強める民主党に対し、日本維新の会は安倍政権にもともと近く、みんなの党は急接近中。その光景は党首討論でもクッキリと表れた。
4日夕、東京・JR有楽町駅前。野党7党の幹部が集結する中、民主党の海江田(かいえだ)代表は特定秘密保護法案について「私たち7党は若干の違いはあるが、しっかりスクラムを組んで明日、明後日の間に強行採決させない」と声を張り上げた。
だが、野党各党の違いは「若干」とはとても言い難い。党首討論で海江田氏が特定秘密保護法案を批判すると、首相は猛反発。2010年に起きた尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の中国漁船衝突事件の映像公開を民主党政権が拒否したことを引き合いに「そもそも出すべきビデオを出さなかった。まずそれをはっきり申し上げておきたい」とやり返した。
首相が法案処理が立て込む会期末に、野党第一党党首である海江田氏を挑発するだけの余裕を持てたのは、野党連携の足元を見透かしているからだ。海江田氏に続き、質問に立った維新の石原慎太郎共同代表(81)は「首相の祖父の岸信介(きし・のぶすけ)首相時代の1960年代の安保騒動に似たヒステリー現象が国会周辺で起きているが、時代の需要に即応した必要な法律だ。岸さんに学んで毅然(きぜん)と対処してほしい」と法案成立にエールを送った。
その瞬間、維新の松井一郎幹事長(大阪府知事)とパイプのある菅義偉(すが・よしひで)官房長官(64)の頬が緩んだ。石原氏は首相とハーモニーを奏でるように、中国漁船衝突事件の民主党の対応を「腰抜け」とこき下ろした。
みんなの党の渡辺代表も集団的自衛権の行使容認を念頭に「前例踏襲の憲法解釈しかできない状況では、大激変の世界の中で日本が再び輝ける国としてその位置を占めるのは不可能だ」と述べ、安全保障政策で首相と歩調を合わせた。
野党3党の中で孤立感を漂わせる民主党に与党側は攻撃の手を緩めない。
「内閣委員長の解任決議案を出す」
自民党の脇雅史(わき・まさし)参院幹事長(68)は4日の参院議員総会でこう切り出した。内閣委員長は民主党の水岡俊一(みずおか・しゅんいち)氏(57)。自民党側が、解任決議案という強硬手段をちらつかせたのは、ある重要法案の会期内成立が危ぶまれているためだ。
内閣委員会は11月26日に国家戦略特区法案の趣旨説明と質疑を行って以降、一度も開かれていない。法案を“人質”に取り、会期延長に持ち込んで特定秘密保護法案の成立をずるずる先延ばしさせようという民主党の狙いはもはや明らかだ。
4日午後にさいたま市内で開かれた特定秘密保護法案の地方公聴会。この公聴会開催を正式決定した4日昼の参院議院運営委員会の理事会で、民主党の前川清成(きよしげ)氏(50)は「強行採決が繰り返されている。竹下登(たけした・のぼる)元首相は『国会運営は野党の言い分を7割聞き入れる』と言った。先輩の発言をかみしめてほしい」と与党側の対応を批判。みんなや共産党も同調した。
だが野党がどこまで共同戦線を維持していけるかは見通せない。党首討論で石原氏からかつての政権を「腰抜け」呼ばわりされた海江田氏は「あれは石原さんの持論ですから」と語るのがやっとだった。(坂井広志、小田博士/SANKEI EXPRESS)