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特定秘密保護法案 「知る権利」の担保 自公足並み乱れ

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特定秘密保護法案 「知る権利」の担保 自公足並み乱れ

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 ≪衆院で審議入り「報道の自由」明記≫

 機密漏洩(ろうえい)した公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案は11月7日の衆院本会議で趣旨説明と質疑を行い、審議入りした。安倍晋三首相(59)は今国会会期内の成立に意欲を示したが、焦点は民主党など野党との修正協議、さらには法案成立の見通しに移っている。

 安倍晋三首相は7日の衆院本会議で、国家安全保障会議(日本版NSC)に実効性を持たせるため、特定秘密保護法案を今国会での成立に協力を求めた。設置の意義を「外国との情報共有は情報が各国で保全されることが前提だ。NSCの審議を効果的に行うためにも秘密保全に関する法整備が重要だ」と強調した。

 野党側は「国民の知る権利」を制約するとして懸念を強めた。首相は「バランスを考慮して法を適用する」と述べ、取材や報道の自由も「通常の取材行為は処罰対象にならないと明記している」と述べた。

 首相は、厳格に情報を管理するため2007年8月に定めた国の安全や利益に関する「特別管理秘密」について、昨年12月時点で約42万件存在することを明らかにした。その上で「特定秘密はさらに対象範囲を限定し、特別管理秘密よりも少なくなる」との見通しを示した。

 特定秘密の指定に第三者が関与する仕組みについては「行政機関以外の者が行うのは適当ではない」と否定的な考えを示した。特定秘密の指定件数の開示については、定期的な公表に向けて検討していることを明らかにした。法案担当の森雅子少子化担当相(49)は、特定秘密指定の統一基準を策定する有識者会議の人選について「報道機関や法律の専門家を検討している」と語った。

 7日の本会議では、行政機関が公文書を非公開とした場合に裁判所が是非を判断する「インカメラ審理」制度導入を図るため、民主党が提出した情報公開法改正案も審議入りした。提出者として答弁した民主党の枝野幸男元官房長官(49)は「情報公開制度の充実なしに秘密保護法のみが制定されれば、国民の知る権利を侵害する」と述べ、情報公開法改正も必要だと訴えた。

 ≪「知る権利」の担保 自公足並み乱れ≫

 11月7日に審議入りした特定秘密保護法案は、今国会会期内に成立できるかどうかが焦点となる。

 自民党は、22日までに法案を衆院通過させ、12月6日までの会期を1週間程度延長してでも成立を目指す方針を崩していない。

 ただ、公明党の山口那津男(なつお)代表は(11月)7日、民主党が提出した「知る権利」を担保するための情報公開法改正案について「柔軟に検討しながら合意形成に努力したい」と述べ、改正案の修正協議に取り組む意向を示した。公明党は「知る権利」の明記にこだわるなど、もともと自民党と法案への姿勢に違いがあった。

 自民党は「修正は全く考えていない」(国対幹部)との姿勢で、(11月)8日の実質審議入り前に与党の足並みの乱れが表面化しつつある。

 一方、官邸サイドの方針は固まっていない。野党の反発が強い秘密保護法案の成立を強行すれば、「世論の政権批判が強まりかねない」(政府高官)と世論に神経をとがらせている。

 安倍晋三首相に近い野党議員は、世論対策として、民主党と情報公開法改正案と合わせた修正協議を行った上で、成立については来年1月の通常国会冒頭まで成立を先送りするよう官邸サイドに進言している。

 ≪諸外国との情報共有のため不可欠≫

 特定秘密保護法案は、高度な機密情報である「特定秘密」の漏洩防止を強化することが狙いだ。政府は、国家安全保障会議創設に伴い、諸外国の情報機関との情報共有のため不可欠としている。

 特定秘密は(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイなど)防止(4)テロ活動防止-の4分野23項目。閣僚ら各省庁のトップが「漏洩すると国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある」と判断した情報を指定する。

 特定秘密の有効期間は上限5年で、政府が必要とすれば更新が可能だ。期間が30年を超える場合には内閣の承認が必要となる。特定秘密の指定や解除に関する統一基準は有識者会議の意見を聴いて策定する。

 漏洩させた公務員らへの罰則は最高懲役10年。特定秘密を取得した側も最高懲役10年が科せられるが、法案に「知る権利」や「報道の自由」への配慮を明記。取材行為について「法令違反や著しく不当な方法と認められない限り正当な業務として罰しない」とした。(SANKEI EXPRESS

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