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人口減少 少子化対策待ったなし 2060年には8700万人 高齢者4割

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人口減少 少子化対策待ったなし 2060年には8700万人 高齢者4割

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「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掛ける安倍晋三(しんぞう)首相(右)と石破(いしば)茂地方創生相=2014年9月5日、東京都千代田区永田町(共同)  安倍晋三政権は、人口減少問題や地方活性化に取り組む「地方創生」を最重要課題に掲げた。日本は急速な少子高齢化で既に人口減少が始まっている。このような国は世界でもまだ珍しく、経済縮小、国力低下が懸念される。止まらない東京圏への一極集中も相まって、地方衰退の危機感も大きい。地方創生が焦点となる29日召集の臨時国会を前に論点をまとめた。

 人口減少社会の本格的な到来に対する危機感は、国や自治体でもかつてなく高まっている。安倍政権は年末にかけて具体策を打ち出す構えで、自治体が独自の戦略をつくる動きも広がる。ただ、日本の財政が急速に悪化する中、大規模な減税や予算措置は難しく、抜本的な解決策を打ち出せるかは不透明だ。

 政府は、今年6月にまとめた経済財政運営の指針「骨太方針」で、人口維持の目標を初めて掲げ、第3子以降の育児や教育を重点支援するなど少子化対策を強化する方針を示した。8月末に締め切った来年度予算の概算要求でも、地域経済の活性化策などで4兆円程度の特別枠を設けた。9月の内閣改造では地方創生担当相が新設され、石破茂氏が就任した。地方活性化の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」も本格稼働し、2020年までの「総合戦略」などを年末にまとめる方針だ。9月29日召集予定の臨時国会には関連法案が提出される。

 自治体の動きも活発化している。全国知事会は7月、少子化問題に対して「国家の基盤を危うくする重大な岐路に立たされている」と非常事態宣言を出した。各都道府県では、対策会議や専門チームを設置して少子化対策などを議論しているところも多い。

 ただ、各省庁が予算要求に盛り込んだ対策をみると、既存事業の看板を付け替えただけのものが多く、内容が重なっている施策も目立つ。来年度予算の一般会計要求総額は過去最大の101兆円超に膨らんでおり、財政面での制約も大きい。自治体や民間のアイデアも取り込んで有効な対策を示せるか、政権の本気度が問われている。

 ≪2060年には8700万人 高齢者4割≫

 Q 日本の人口は減っていくのですか

 A 現在の推計人口は約1億2700万人で、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は2013年で1.43です。この水準が続くと、60年の人口は今より4000万人減少して約8700万人となり、65歳以上の高齢者が全人口の4割を占めるとの推計が出ています。

 Q 人口減少でどういう問題が起きますか

 A 働き手が減りモノやサービスを生産する力が落ちる上、国内でモノが売れなくなって経済が停滞し、国力低下が懸念されます。年金など社会保障制度の現状維持も難しくなります。今は現役世代2、3人で高齢者1人を支えている計算ですが、50年にはほぼ1人で高齢者1人を支えることになります。政府は今年6月、少子化と人口減少を克服して50年後に1億人程度の人口を維持するとの目標を掲げました。

 Q 人口は都市部に偏っているのですか

 A 地方から流出し、東京圏(東京都と神奈川、埼玉、千葉各県)に日本の人口の3割近くが一極集中しています。13年の東京圏への転入者は転出者を9万6524人上回りました。特に若い人が進学や就職の際に都市部に転出しており、地方で働き口が少ないのが主な原因です。一方で東京都は、13年の出生率が1.13と全国最低で、晩婚化が進み、未婚率も高く、少子化が特に深刻です。さらに、東京圏も急速な高齢化を迎えつつあり、人口問題は日本全体が立ち向かうべき課題と言えます。

 Q 地方はどうなるのでしょうか

 A 有識者による「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)は5月、地方から大都市への人口流出が今のまま続くと、全自治体の半数に当たる896市区町村で20、30代の女性が30年間に半分以下になるとの試算を発表。「自治体運営が難しくなり、将来消滅する可能性がある」と指摘し、反響を呼びました。

 Q 政府はなぜ地方創生に力を入れているのですか

 A アベノミクスによる景気回復の効果は都市部が中心で地方にはまだ波及していないと言われているからです。政府は6月にまとめた成長戦略に「ローカル・アベノミクス」の具体化を急ぐ方針を盛り込みました。9月設置の「まち・ひと・しごと創生本部」は、東京一極集中を是正し、地方で安心して子育てできる環境を実現するとした基本方針を決めました。

 これらは、10月の福島、11月の沖縄両県知事選、来春の統一地方選と続く地方選向けのアピールとの指摘もあります。安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げの難しい判断を年内にしなければなりません。そのためにも地方創生で得点を挙げたい考えとみられます。(SANKEI EXPRESS

 ■地方創生本部 人口減少問題や地域経済の活性化対策に関する政府の司令塔として、各省庁の地方関連政策を調整する。正式名称は、まち・ひと・しごと創生本部。全閣僚がメンバーで、本部長は安倍晋三首相、副本部長は石破茂地方創生担当相、菅義偉官房長官がそれぞれ務める。事務局は経済産業、厚生労働、国土交通など各省の職員約70人で構成し、2020年までの5カ年計画「総合戦略」などをまとめる。

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