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経済
子育て支援策で女性雇用100万人増 14年度経済財政白書
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労働力不足を乗り切るには、主婦や高齢者らを労働力として活用することが不可欠。人材を確保しようと、派遣社員だった主婦を直接雇用に切り替える企業も出てきた(共同) 甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(64)は7月25日の閣議に、2014年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。白書は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」によって、日本経済がデフレ状態から脱却しつつあることを強調。一方、人口減少や経常赤字など日本経済の構造変化への対処の必要性も訴えた。政権が重視する女性活用では、子育て支援策の拡充などで、約100万人の女性の雇用を生み出せるとしている。
日本経済の現状について「物価は緩やかに上昇し、デフレ脱却へ向けて着実に進んでいる」とした。
4月の消費税増税前の駆け込み需要は、自動車や家電を中心に3兆円程度と試算した。増税後の反動減では「個人消費は持ち直しつつある」との認識を示し、影響は限定的とした。
一方、デフレから脱却しつつある状況が、労働力不足などの新たな課題を浮き彫りにしたとも指摘。長年のデフレ経済で日本企業の海外生産拡大や輸出数量の減少が生じ、経常収支の赤字をもたらしているとの認識を示した。
知的財産などを活用した付加価値の高い製品の輸出などで、「稼ぐ力」を高めることが必要としている。
≪労働力不足に警鐘 高齢者の活用も促す≫
7月25日公表された経済財政白書は、労働力不足への対応を今後の日本経済の課題の一つと位置付けた。日本企業が製品やサービスで付加価値を生み出し、国際的な競争に打ち勝つためにには、一定の労働力確保が不可欠だからだ。景気回復に伴いデフレ脱却が進む中で、すでに建設業など一部業種では人手不足が顕在化しており、労働力確保の議論は避けて通れなくなっている。
白書によると、労働力人口は1998年の6793万人をピークに減少に転じ、2013年は6577万人とすでに200万人以上減っている。
女性や高齢者の労働参加が進まなければ、2030年には5683万人とさらに約900万人減少するとみられる。こうした労働力人口の大幅な低下は、「わが国全体の所得を押し下げるとともに、潜在成長率の低下をもたらす可能性もある」と、白書は警鐘を鳴らす。
そうした状況を改善するには、潜在的な労働力となる層の就業促進策が不可欠だ。女性の就業率をグラフで示す際、出産・育児に伴って30~39歳の労働参加率が落ち込む「M字カーブ」問題の解決は特に重要だ。
高齢者の活用も欠かせない。日常的に介護なしで生活できる「健康寿命」は2010年時点で男性が70.42歳、女性は73.62歳。企業の雇用義務年齢である65歳を超えてなお、働きたい意欲と能力のある高齢者は少なくないとみられる。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは人手不足への対処を打ち出した今回の白書の方向性を評価しつつも、「非正規社員が増えてきた原因や正社員との格差是正といった構造問題への分析や言及は不十分」と注文をつける。
白書は、育児対策の充実だけでも女性の労働力人口を約100万人増やせると分析。高齢者についても、高度な技能や専門知識を持つ高齢者が企業で長く働くことが労働生産性にとっても有利に働くとしている。
個々の労働者が希望する柔軟な働き方を可能とする制度づくりができるか。労働分野や社会保障制度での大胆な改革が求められる。(永田岳彦/SANKEI EXPRESS)