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経済
貿易赤字 過去最大の13.7兆円 2013年度 燃料費膨らみ10兆円の大台突破
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貿易収支の推移(2001~2013年度)。※2013年度は速報値 財務省が4月21日発表した2013年度の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は13兆7488億円の赤字だった。これまで最大だった12年度の8兆1578億円を大幅に上回り、比較可能な1979年度以降で最大となった。年度ベースで10兆円を超える赤字を記録したのは初めて。輸出が伸び悩む一方、円安で輸入品価格が上昇したほか、原子力発電所の停止に伴う火力発電用の原油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大幅に膨らんだのが影響した。
年度の赤字は11年度から続いており、初めて3年連続の赤字となった。
輸入額は、前年度比17.3%増の84兆6053億円と4年連続で増加し、過去最大を更新した。中東からの原油やLNGの輸入が大幅に伸びたほか、円相場が対ドルで約21%円安になったことも輸入額を膨らませた。消費税増税前の駆け込み需要による内需拡大も影響した。
輸出額は、米国向けの自動車や中国向け石油化学製品が伸びて前年度比10.8%増の70兆8564億円。円安が追い風になったが、生産の海外移転が進んでいることもあり、数量ベースでは0.6%増と伸び悩んだ。
国・地域別では、対中国の貿易赤字が39.1%増の5兆5713億円となり、2年連続で過去最大を更新。欧州連合(EU)向け赤字も7192億円と最大だった。中国に対する赤字は26年連続、対欧州は2年連続。対米国は6兆668億円の貿易黒字だった。
同時に発表した3月の貿易収支は1兆4463億円の赤字だった。赤字は21カ月連続で、赤字額は3月としては過去最大だった。
≪輸出拡大シナリオ限界 円安でも伸びず≫
2013年度の貿易統計では、貿易赤字が年度ベースで初めて10兆円の大台を突破した。急速な円安の進展で輸入が膨らむ一方、輸出量は伸び悩み、貿易赤字に歯止めがかからない。国内製造業を中心とした構造変化が進む中、円安誘導による輸出拡大シナリオは限界に来ている。政府は新たな輸出産業の育成などが急務だ。
「(貿易赤字は)緩やかに縮小に向かっていくだろう」
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は4月21日の記者会見で、過去最大の貿易赤字について、海外経済の回復による輸出の持ち直しなどで改善するとの見通しを示した。楽観論の背景には、かつて貿易黒字を牽引(けんいん)した輸出産業への過信がある。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安は当初、原子力発電所の長期停止で増大した火力発電所用の燃料価格上昇を引き起こすものの、やがては輸出増につながり貿易収支を改善するという理屈だ。
だが、輸出増までのタイムラグとされた半年から1年が過ぎても、円安による輸出拡大効果は鈍いままだ。3月も原油や液化天然ガス(LNG)の輸入が2桁台の伸びを示す一方、主要な輸出品である自動車の輸出は9.0%の伸びにとどまった。
主因と指摘されるのが「輸出入における産業構造の変化」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)だ。円高時代に家電や自動車などの製造業が生産拠点の海外移転を加速した。このため、円安がただちに輸出拡大につながらなくなってきたほか、価格が上昇しても、輸入に頼るしかない商品分野が増えている。
この潮流にあらがうのは難しい。内閣府の「企業行動に関するアンケート」によると、12年に20.6%だった国内製造業の海外生産比率は13年度(実績見込み)に21.6%、18年度には25.5%にまで高まる見通しだ。少子高齢化に伴う生産人口の減少も視野に入っており、企業も国内の設備投資に踏み切れない。
消費税率引き上げで、国内消費の落ち込みが懸念される中、輸出も伸び悩めば、景気の腰折れを招きかねない。政府は、農業などの新たな輸出産業の育成や内需拡大など、新たな成長モデルの確立が求められている。(SANKEI EXPRESS)