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消費増税補う輸出増は期待薄

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消費増税補う輸出増は期待薄

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実質輸出指数(2010年=100)と円相場(月ごとの12カ月移動平均)の推移=2001年1月~2014年、※日銀のデータから作成  【国際政治経済学入門】

 「景気は、緩やかに回復している。また、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要が強まっている。先行きについては、輸出が持ち直しに向かい、各種政策の効果が下支えするなかで、家計所得や投資が増加し、景気の回復基調が続くことが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続きわが国の景気を下押しするリスクとなっている。また、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が見込まれる」

 これは、安倍晋三首相、麻生太郎財務相らが出席した3月17日の経済関係閣僚会議に、内閣府が提出した3月の月例経済報告の冒頭説明である。消費税増税実施を翌月に控えている事情から、この報告には格段の重みがあるのだが、いったい何を言いたいのかわからない。

 官僚特有の逃げ口上

 素直に言えば、「消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減などのために、今後の景気がどうなるのか、実はわからない」で済む。ところが、財務省が支配する内閣府官僚は「消費税増税に踏み切っても景気は大丈夫だ」と言って安倍首相に消費増税実施の決断に踏み切らせた手前もあり、「回復基調の持続が期待される(だれが期待するのか不明)」と及び腰ながらも、「景気は大丈夫ですよ」と弱々しくつぶやくのである。外需の「下振れリスク」を付け足したのは、官僚特有の逃げ口上だろう。

 4~6月期の国内総生産(GDP)が駆け込み需要の反動減のため、1~3月期に比べて大きく落ち込むことは内閣府エコノミストも認めざるを得ない。7~9月期以降、景気が正常な上昇軌道に乗れるかどうかは、まず輸出の回復、次いで民間設備投資というのが民間専門家の大勢である。さらに言えば、民間設備投資は、輸出によって左右される。国内需要が消費税増税のために押さえつけられる以上、外需の増加がなければ、企業は設備投資に踏み切れないからだ。

 公共工事消化できず

 消費税増税は、国内需要の6割近くを占める家計消費を大きく圧迫し続ける。景気の落ち込み具合を和らげ、7月以降に再浮揚させる決め手として政府が考えているのは公共投資で、財務省は公共工事の前倒し発注を担当官庁や地方自治体に指示している。昨年(2013年)4~6月期のGDPを大きく引き上げたのは大型補正予算の早期執行だったが、今回も同じ手口で7~9月期のGDPを押し上げ、安倍首相に2015年10月からの消費税率2%の追加引き上げをのませるというのが、財務官僚の狙いだ。

 このシナリオは経済を攪乱(かくらん)させる。これまですでにみられるように、民間の建設業者は職人不足で公共工事の注文が一時期に集中しても消化できない。次に、大型補正を加えた15カ月予算ベースでみると、14年度の公共事業予算は1兆数千億円のマイナスで、年間ではむしろGDPを押し下げる要因になる。

 政府や日銀は、米欧を中心にした景気の拡大が見込まれるので、輸出が次第に増えていくと期待する。仮に米欧の景気回復が持続したとしても、輸出は増えるだろうか。最近の民間機関の調査部門の大方の分析の答えは、はかばかしくない。最大の理由はリーマン・ショック後の世界景気を支えてきた中国など新興国の景気減速である。

 さらに日本企業の多くはこれまでの超円高・デフレの間に海外の生産拠点を大きく増強した。すでに国内外の需要を賄うのに十分な供給能力があるので、国内で新規設備投資する必要性に乏しい。つまり輸出増も設備投資増も期待できないという見方が多いのだ。

 円安誘導が鍵だが…

 グラフは日本の輸出と円・ドル相場の推移である。輸出を数量規模を反映する実質指数で見ると、アベノミクスによる円安効果にもかかわらず、伸びていない。ゴールドマン・サックス日本法人の分析では、11年から日本の輸出数量は減少に転じ、エネルギー資源の輸入増加と重なって、日本の貿易赤字は構造的であり、解消は困難という。

 ただ、グラフに目を凝らすと、実質輸出は円相場の上下への振れよりも、水準によって決まるようにも見える。1ドル=110円から120円台の03年から07年にかけて輸出量は大きく増え続けた。この視点からすれば、1ドル=102~103円という程度の現在の水準では海外生産を減らして、日本からの輸出に切り替える可能性は少ない。つまり、もう一段の円安局面への移行が輸出増の鍵になる。円安誘導の決め手は日銀の追加金融緩和だが、今のところ、日銀は慎重な構えを崩していない。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS

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